葛井寺のハレの御開帳の日
大阪・葛井寺(ふじいでら)の「十一面千手観音」は2018年2月に東博で行われていた「仁和寺と御室派のみほとけ」展でエース級の存在でした。その出開帳からお戻りになり、間もなく本拠地で毎月18日の定例の開帳を迎えます。
千手観音は通常、手は42本しかありませんが、こちらの千手観音は本当に1,000本あり、胴体を包み込むように背中から伸びる手が、まるで生きているような生命力を感じさせます。年12回の開帳日の中でも4月は餅巻きが行われ、境内が縁日屋台でにぎわいます。とても愛されているお寺であることがわかります。
葛井寺は大阪南部の奈良県にほど近い藤井寺(ふじいでら)市にあります。この自治体名の由来は「葛井寺」です。寺は奈良時代の初め、聖武天皇の勅願で行基が開創したと伝えられています。現本尊「十一面千手観音」は天平時代に多用された脱活乾漆法で作られており、奈良時代半ばの制作だと考えられています。
【公式サイトの画像】 十一面千手観音
手の数は、正面合掌2本+側面大手38本+側面小手1,001本=1,043本あります。本当に手が千本ある千手観音は他に唐招提寺・金堂の千手観音くらいですが、こちらは欠損があるため953本になっています。
やはり本当に1,000本あると圧巻です。三十三間堂に仏像が1,000体並ぶのと似た、数の力が及ぼす迫力があります。檜皮づくりの屋根が、皮が積み重なっていることで暖かさと美しさを醸し出しているのとよく似ています。千本の手が木のぬくもりを感じさせ、仏様を実に包容力のある存在に見せています。
お顔も悟りを開いた表情をとてもリアルに表現されています。お顔にも天平物仏の美しさの特徴が表れています。木のぬくもりに包まれてとても温かいお顔です。お会いするととても心が軽くなります。
開帳日の4月18日は、早ければ寺の名物の藤の花が咲いているかもしれません。寺にとっては寺名にも含まれるように、とても大切な花です。可憐な紫色の花びらのシャワーは、まさに春の明るさを感じさせます。ぜひお出かけください。
【公式サイト】 藤の花の開花状況
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
白洲正子の名著
葛井寺
http://www.fujiidera-temple.or.jp/
原則休館日:なし
※本尊・十一面千手観音は毎月18日のみ開帳されます。
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