庭園の奥の書院で弥勒菩薩にお会いできます
野中寺(やちゅうじ)は、大阪南部の奈良県にほど近い南河内エリアの羽曳野市にあり、葛井寺とは車で5分ほどの距離です。南河内は、古代より難波津と飛鳥を結ぶ竹ノ内街道が通っていることもあり、飛鳥・奈良時代以来の古刹も少なくありません。
野中寺も飛鳥時代の創建で、白鳳時代の見事な弥勒菩薩像が伝わっています。弥勒菩薩像は秘仏ですが、葛井寺の千手観音と同じく毎月18日に開帳されます。18日をお見逃しなく。
野中寺は聖徳太子が建立した48カ寺の一つとされ、奈良時代には巨大伽藍があったことが発掘調査で確認されています。中世には荒廃していたようですが、江戸時代に復興しています。弥勒菩薩は1918(大正7)年に蔵で発見されたもので、伝来は全く分かっていません。
【羽曳野市サイトの画像】 弥勒菩薩半跏像
弥勒菩薩には、刻まれた銘文から飛鳥時代の天智天皇時代の製作であると考えられています。文化史における白鳳時代にあたりますが、お顔の特徴はもう少し早めの飛鳥仏の特徴も残っています。
飛鳥仏の微笑の表情は消えていますが、白鳳仏のような中性的な優美さはなく、飛鳥仏のようにシンプルな表現です。飛鳥仏の太い唇や杏仁型の眼の表現は消えていますが、白鳳仏の細くしまったウエストが胴体のプロポーションの優美さを感じさせます。時代の過渡期の制作と私は感じています。とても個性的な表情になっています。
像高18cmととても小さいですが、開帳の日は間近で見ることができます。開帳と言っても光が当たらない厨子の中で、ほとんど見えないことはよくあります。しかし野中寺は違います。明るい部屋でとてもよく見えます。
お姿には見とれてしまいます。とても美しい仏様です。2016年夏にソウルと東京で行われた「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」に出展された韓国代表・国宝78号像によく似ています。朝鮮半島出身の仏師による作ではないかとも思えます。
【韓国国立中央博物館サイトの画像】 国宝78号(半跏思惟)像
境内がとても大きい寺です。冬には山茶花(サザンカ)が寺を彩ります。白鳳時代の美仏と間近でお会いできる機会は貴重です。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
仏像って面白そう、と感じ始めた人はまずこの一冊から
野中寺(羽曳野市観光協会サイト)
http://www.habikino-kk.net/post_jisya/%E9%87%8E%E4%B8%AD%E5%AF%BA
原則休館日:なし
※弥勒菩薩半跏思惟像は毎月18日のみ開帳されます。
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