ひろしま美術館に引き続き、広島県立美術館を訪れました。展示スペースがかなり広いこともあり、たっぷりとコレクションを鑑賞することができます。全国を巡回する大型の企画展の会場としてもよく使われているようです。
- 5,000点を超えるコレクションの特徴は、20c前半の日本と西洋の絵画+日本とアジアの工芸品
- コレクション総選挙や子連れ向けサービスなど、公立美術館としてはマーケティングにかなり積極的
- 隣接する浅野家の大名庭園・縮景園(しゅくけいえん)と一緒に楽しめることも大きな魅力
ひろしま美術館と並んで来館者に楽しんでもらおうと頑張っている印象を受けます。ひろしま美術館からも徒歩10分ほどです。二館はしご鑑賞をぜひおすすめします。
色絵馬、広島県美のアイドル
広島県立美術館は1968(昭和43)年に開館しました。戦前からあった東京/京都/大阪を除く、日本の公立美術館の開館時期としてはかなり早い方に属します。
美術館があるのは、広島城を本拠に42万石の大藩・広島藩を幕末まで治めた浅野家の別邸の跡地です。隣接する縮景園も浅野家別邸の庭園でした。大正時代に浅野家の伝来品を展示する美術館「観古館(かんこかん)」が造られ、昭和になって縮景園とともに浅野家から県に寄贈されます。原爆投下により建物と庭園は壊滅しますが、市民の熱意で1968年に再び美術館が復活することになります。
現在の建物は1995年に完成したものです。縮景園の豊かで美しい緑を大型のガラス壁を通じて楽しめるようになっているとともに、展示スペースもかなりゆとりができました。2Fが年4回の所蔵作品展、3Fが大型の企画展や県民の作品展の会場として使われています。
縮景園の緑のシャワーが館内にも注ぎ込む1Fロビー
2Fの所蔵作品展では「対決! 5番勝負 ―師VS弟子、東VS西…」を鑑賞しました。コレクションをジャンルごとに様々なテーマで対比させ、その魅力を比べることができる展示構成です。
【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
第1の勝負は、入口すぐのオープン展示スペースで、地元出身の工芸家の師匠と弟子の作品の対比です。広島に漆芸のイメージは持っていませんでしたが、広島県出身の六角紫水(ろっかくしすい)が、明治に日本の漆芸を体系化した偉大な人物だったことを学べました。
第2の勝負は、西洋版画の手法、木版/銅板/リトグラフの違いによる仕上がりイメージの対比です。カンディンスキーの版画集「小さな世界」は、版画手法の違いによる仕上がりの違いを対比するには上手な展示です。
第3の勝負は、明治後期以降の「創作版画」と「新版画」の対比です。創作版画とは、作者が自ら画/彫/摺のすべてを行う作品です。新版画は、江戸時代の浮世絵のように、画/彫/摺を分業して制作する作品です。近年人気急上昇中の新版画の絵師・吉田博の作品が目につきます。瀬戸内の温和な風景はいつ見ても心が和みます。
第4の勝負は、近代日本画の師弟の対比です。広島県出身の師匠:児玉希望(こだまきぼう)と弟子:奥田元宋(おくだげんそう)の作品が注目されます。師弟関係はぎくしゃくしていたためか、師弟とは思えないほど画風が異なります。元宋の幽玄な朦朧体(もうろうたい)表現は、戦後の日本画の潮流の王道を行くものでした。
第5の勝負は、日本の工芸作家の地域性の東西対比です。この部屋には館内の随所で見かけるアイドル「伊万里柿右衛門様式色絵馬(いろえうま)」の本物が展示されています。20cmほどの小さなオブジェですが、実に元気のよい顔に造られており、見ているだけで心が明るくなります。
「伊万里色絵花卉文輪花鉢(いろえ かきもんりんかばち)」は伊万里らしい上質なデザインが秀逸です。花の赤色を華やげる青色の使い方が洗練されています。さすがの重要文化財です。
前回の所蔵作品展での人気作品総選挙結果
私が訪れた際は企画展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」が行われていました。幕末を描いた歌川国芳は江戸時代最後のスター浮世絵師、明治を描いた月岡芳年は最後の浮世絵と言われています。とても手の込んだ激動の時代の世相の風刺表現は感心の連続で、国芳ならではのガイコツもしっかり楽しめました。
【広島県立美術館 展覧会 公式サイト】 挑む浮世絵 国芳から芳年へ
1Fのミュージアムショップはかなり大きく、ちょっとしたお土産雑貨選びに便利です。全国の美術館や美術図書の閲覧室も充実しており、公立美術館としては集客にかなり頑張っています。鑑賞後に1Fロビーから縮景園の緑を見ると、きっと散策して見たくなるでしょう。緑に包まれた広島の街をじっくりとお楽しみください。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
一人旅ガイドは出張時におすすめ
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<広島市中区>
広島県立美術館
春の所蔵作品展
対決! 5番勝負 ―師VS弟子、東VS西…
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:広島県立美術館
会場:2F展示室
会期:2019年4月17日(水)~6月30日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30(金曜~19:30)
※5/19までの前期展示、5/21以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この展覧会は、非営利かつ私的使用目的でのみ、撮影禁止作品以外の会場内の写真撮影が可能です。
フラッシュ/三脚/自撮り棒/シャッター音と動画撮影は禁止です。
※この美術館の所蔵品は、年4回の「所蔵作品展」開催時のみ鑑賞できます。
◆おすすめ交通機関◆
広島電鉄市内電車・白島線「縮景園前」駅下車、徒歩1分
JR広島駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:徒歩15分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場は有料の駐車場があります。
※渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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