20世紀は戦争の世紀だったといわれ、21世紀以後はその愚を繰り返さない世紀への幕開けになるのかと期待していた。
だが、紛争はあちらこちらで勃発し、ニュースも新しみを感じなくなるほど感覚が麻痺してしまった。
現在 中東・アフリカばかりか、仏教徒によるロヒンギャへの殺戮はゾッとするほどおぞましい。
ネットには生々しい映像が流れ息を呑むほどだが、不条理にたいして若かりしころの怒りがこみ上げて来ない。
正直 麻痺してしまった感覚に私自身が悲しくもある。
そこで思い出した作品がある。
以下は、2010年に戦争という人類の愚かな行為をテーマに描いてきた作品展示会のキャプションを紹介します。
何という戦争なんだ 1985年制作 f100 油彩
1970年ベトナム戦争は拡大し、米軍はカンボジアまで侵攻していった。
米国がまさに泥沼に入ってゆく中、日本では軍需景気で湧き上がり「大阪万博」でうかれていた。
そんな日本であったが、アフリカでは民族間紛争が拡大。特にビアフラは生活物資も途絶え、餓死する子供たちの写真が次々と報道された。
(後で暴露されたことだが、時のビアフラ政府の為政者たちの情報操作で、国際援助を受け莫大な利益を得て取得していたらしい)
その後ビアフラばかりでなく、民族間紛争は絶えることなく勃発し、そのたびに弱き市民が犠牲になってきた。
85年、アメリカのミュージシャンが立ち上がり、アフリカ飢餓旧救済チャリティー・コンサート WE ARE THE WOLDで あった。
今こそあの声に身を傾けるんだ
今こそ世界が一段となって
人々が死んでいく 命のために手を貸すときが来たんだ
飢餓状態の子供たちの姿は、インドの旅で数多く観てきたが、正直わたくしにはどうすることもできなかったジレンマがあった。
(心に残るとっておきの話・潮文社--インドにて--記載)
ならば、その子供たちを真正面に捉えようと、激しい憤りを持って描いた。
しかし、政治色が強すぎると中央画壇からは冷遇され、画壇と決別するきっかけになっていった。
自分が目の当たりにしたリアリティーをベースに、真の告発・叫ぶ創造へとなっていった記念的な作品です。
今一度作品を見直し、私自身を考えなくてはならない。