(1938/アルフレッド・ヒッチコック監督/マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレーヴ、ポール・ルーカス、グーギー・ウィザース、リンデン・トラヴァース、メイ・ウィッティ)
少し前にNHK-BSで流れていたのを録画していたもの。HDDにダビングしながらの鑑賞。
時代設定はよく分からないが、製作年度が38年(←なんと戦前!)だからその辺りだろう。バルカン半島の東側の国。スイス経由でイギリスまで通じている鉄道のある駅に、ほど近いホテルから話はスタートする。
雪崩のために列車が不通となり、一晩足止めをくったホテルの人々が、グランドホテル形式で紹介される。
二人組の英国紳士。外交官か、ビジネスマンかはちょっと忘れた。音楽教師をしているという老婦人フロイ(ウィッティ)。不倫らしき中年男女。結婚が決まって、友人達との独身最後の旅行を楽しんでいるアメリカ人女性アイリス(ロックウッド)。そして、作家だか音楽家だかよく分からない青年ギルバート(レッドグレーヴ)、などなど。
足止めをくった夜のアレコレが点描されるが、全然サスペンスの匂いがしないので、『なんだ、なんだ』と思っていると、ホテルのバルコニー下でギターを弾いている男性が、いきなり後ろから伸びてきた両手で首を絞められ、画面の外へ消えていく。雪の夜に外でギターを弾いているというのも変だが、このちょっと長めの導入部は、再見すると色々な伏線が分かって面白いです。
翌日、列車が開通して、昨夜紹介された人々が乗り込む。駅舎の近くに立ったフロイおばあちゃんを狙ったらしい何かが窓辺から落とされるが、たまたま居合わせたアイリスの頭部に当たる。大した事にはならず、アイリスはここで友達と別れて一人列車の人となる。
乗車後、先程の事故(本当は事件)のせいで気を失ったアイリスを介抱したのがフロイ。昨夜のホテルでも部屋が隣同士だったので、二人は食堂車に行って色々な話をする。
フロイのメキシコ製のお茶をご馳走になった後コンパートメントに戻ると、再び眠りにつくアイリス。しばらくして彼女が起きた時、そこにフロイの姿はなかった。
同室の外国人にフロイについて尋ねると、そんな人は最初から居ないと言う。そんなはずはないとアイリスは言うが、同席している3人の外国人は皆老婦人など見ていないと言う。
列車に乗り合わせていた医者には、頭を打ったせいで幻覚を見たのではないかとまで言われてしまうのだが・・・。
イギリス時代のヒッチコックの最高傑作と言われているらしい。確かに、列車に乗ってからの展開はゾクゾクするほど面白いです。老婦人が消えるトリックは、今となってはすぐに読めてしまうが、映画はアイリスが如何にしてそれに気付くかが焦点で、語り口はミステリー小説を読んでいるようです。
アイリスの探偵のお供は、夕べのホテルでケンカをしたギルバートだけで、演じるレッドグレーヴは、その後のヒッチコック作品のケーリー・グラントのような役回り。女性にちょっと強引なところは、クラーク・ゲーブルも思い出させましたな。
この人はヴァネッサやリンのお父さんです。
▼(ネタバレ注意)
不倫旅行の中年男女や二人組の英国紳士は、フロイの事を知っているのに、自分たちの都合で『見た』と言ったり『知らない』と言ったりする。この辺のストーリーの組立も面白くて見入ってしまいます。
フロイは実はイギリスのスパイで、東側のある情報を掴んだ為に、拉致されようとしていたらしい。殺すのではなく、トリックを使って誘拐しようとしたという事は、スパイの背後関係やシステムの情報を得ようとしていたと考えればいいんでしょうな。
終盤では、英米対東側でドンパチも起こるが、フロイおばあちゃんは一足お先に列車から出ていく。あそこは、『あんな山の中で、年寄りの足で逃げおおせるのか?』と、つっこみたくなる部分でしたな。
ラスト、フロイから託された暗号をギルバートとアイリスが英国外務省に出かけていって渡そうとすると、そこでフロイと再会してめでたしめでたしとなる。
おまけに、あんまり気乗りしていなかった婚約者の出迎えをすっぽかし、ギルバートとハグハグしてしまうアイリスの恋も、めでたしめでたしでした。
▲(解除)
アイリス役のマーガレット・ロックウッドについては何も知りませんでしたが、よくお邪魔するブログによると、<パキスタン生まれ。映画界進出は1934年で、第二次世界大戦前のイギリス映画界の代表的なスターだったそうです。戦後は悪女や妖婦などの役で日本にも知られているそうですが、・・・>とのこと。1916年生まれらしいから、18歳で映画デビューし、この時22歳。その後、悪女に妖婦・・・か。日本人好みの可愛らしい雰囲気の女性ですが、確かにこの映画でも脚線美を披露していましたね。
映画サイトの情報によると、38年に作られた作品なのに初公開は76年だったらしい。
イギリス時代の作品ですが、38年のNY批評家協会賞の監督賞を獲ったということなので、これで、ハリウッドに呼ばれたのかな。
少し前にNHK-BSで流れていたのを録画していたもの。HDDにダビングしながらの鑑賞。
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雪崩のために列車が不通となり、一晩足止めをくったホテルの人々が、グランドホテル形式で紹介される。
二人組の英国紳士。外交官か、ビジネスマンかはちょっと忘れた。音楽教師をしているという老婦人フロイ(ウィッティ)。不倫らしき中年男女。結婚が決まって、友人達との独身最後の旅行を楽しんでいるアメリカ人女性アイリス(ロックウッド)。そして、作家だか音楽家だかよく分からない青年ギルバート(レッドグレーヴ)、などなど。
足止めをくった夜のアレコレが点描されるが、全然サスペンスの匂いがしないので、『なんだ、なんだ』と思っていると、ホテルのバルコニー下でギターを弾いている男性が、いきなり後ろから伸びてきた両手で首を絞められ、画面の外へ消えていく。雪の夜に外でギターを弾いているというのも変だが、このちょっと長めの導入部は、再見すると色々な伏線が分かって面白いです。
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乗車後、先程の事故(本当は事件)のせいで気を失ったアイリスを介抱したのがフロイ。昨夜のホテルでも部屋が隣同士だったので、二人は食堂車に行って色々な話をする。
フロイのメキシコ製のお茶をご馳走になった後コンパートメントに戻ると、再び眠りにつくアイリス。しばらくして彼女が起きた時、そこにフロイの姿はなかった。
同室の外国人にフロイについて尋ねると、そんな人は最初から居ないと言う。そんなはずはないとアイリスは言うが、同席している3人の外国人は皆老婦人など見ていないと言う。
列車に乗り合わせていた医者には、頭を打ったせいで幻覚を見たのではないかとまで言われてしまうのだが・・・。
イギリス時代のヒッチコックの最高傑作と言われているらしい。確かに、列車に乗ってからの展開はゾクゾクするほど面白いです。老婦人が消えるトリックは、今となってはすぐに読めてしまうが、映画はアイリスが如何にしてそれに気付くかが焦点で、語り口はミステリー小説を読んでいるようです。
アイリスの探偵のお供は、夕べのホテルでケンカをしたギルバートだけで、演じるレッドグレーヴは、その後のヒッチコック作品のケーリー・グラントのような役回り。女性にちょっと強引なところは、クラーク・ゲーブルも思い出させましたな。
この人はヴァネッサやリンのお父さんです。
▼(ネタバレ注意)
不倫旅行の中年男女や二人組の英国紳士は、フロイの事を知っているのに、自分たちの都合で『見た』と言ったり『知らない』と言ったりする。この辺のストーリーの組立も面白くて見入ってしまいます。
フロイは実はイギリスのスパイで、東側のある情報を掴んだ為に、拉致されようとしていたらしい。殺すのではなく、トリックを使って誘拐しようとしたという事は、スパイの背後関係やシステムの情報を得ようとしていたと考えればいいんでしょうな。
終盤では、英米対東側でドンパチも起こるが、フロイおばあちゃんは一足お先に列車から出ていく。あそこは、『あんな山の中で、年寄りの足で逃げおおせるのか?』と、つっこみたくなる部分でしたな。
ラスト、フロイから託された暗号をギルバートとアイリスが英国外務省に出かけていって渡そうとすると、そこでフロイと再会してめでたしめでたしとなる。
おまけに、あんまり気乗りしていなかった婚約者の出迎えをすっぽかし、ギルバートとハグハグしてしまうアイリスの恋も、めでたしめでたしでした。
▲(解除)
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映画サイトの情報によると、38年に作られた作品なのに初公開は76年だったらしい。
イギリス時代の作品ですが、38年のNY批評家協会賞の監督賞を獲ったということなので、これで、ハリウッドに呼ばれたのかな。
(何故かビートルズの"Two Of Us"をBGMのハイライトシーン集です)
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 
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理由は私の映画評に書いてありますので、宜しくです。
そうですね、ヒッチコックはこの作品辺りから伏線に時間を掛けるようになりました。その後の「裏窓」や「鳥」も全く同じ手法でしたね。
「三十九夜」「逃走迷路」「北北西に進路を取れ」といった逃走系は早めに最初のサスペンスを持ってくるのですが。マーガレット・ロックウッドの悪女ものも見たことがあります。ええと確か「赤い百合」ではなかったかな。
私はフロイの存在証明を2転3転させる乗客の話が面白かったですね。