新・アドリアナの航海日誌

詩と散文、日記など。

5月の歌

2014-03-30 11:26:57 | 翻訳
5月の歌 ジャック・プレヴェール


ろばと王様と僕
僕らは明日にも死ぬかもしれない
ろばは飢えていて
王様は退屈していて
そして僕は恋をしている

日々の石盤の上に
白墨の指が
僕らの名前を描く
そしてポプラを吹き抜ける風が
僕らの名前を呼ぶ
ろば、王様、人間、と

黒いぼろぎれの日ざしが
僕らの名前をもはやぬぐい消してしまった
牧場の冷たい水
砂時計の砂
赤いバラの木のバラ
遠回りの道
ろばと王様と僕
僕らは明日にも死ぬかもしれない
ろばは飢えていて
王様は退屈していて
僕は恋をしている
5月に

人生は一つのさくらんぼ
死はその種
愛はさくらんぼの木

「histoire」より