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家族喰い/小野 一光

2021-06-09 | ルポルタージュ




登場人物の多さに、1人1人を把握するのに時間がかかり
こんなに苦労して読んだのは「24人のビリーミリガン」以来です。

事件の詳細と犠牲者の多さに、誰もが驚愕し、憤り。
それでも、世間の関心は徐々に薄れていき、他へと向かう。
ほとんど風化しかけても、長い月日をかけ取材を続けた、小野さんを敬服します

読了後の感想は、憤りとやるせなさで、なんとも複雑な気持ちになりました
ある人は角田美代子をモンスターと言い、ある人は化け物と言う
でも、著者の小野一光さんは「角田美代子はモンスターではない」と言う
読後の私の感想も、小野さんと同じです。
どうして自分を破滅に追い込むようなことをしたのだろうか?

以前読んだ「黒い看護婦」と重なるものがありました。
あの事件の主犯格であった吉田純子が、架空の人物を作り上げ、仲間を脅しコントロールするのですが
この事件も、主犯格である角田美代子が架空のヤクザの名前をだし、親戚を脅し、思いのままコントロールする。
共通点はそれだけではなく、吉田純子といい、角田美代子といい、「愛」に餓えている人だと思った。
とても凄惨で、悍ましく、人を人と思わない美代子を擁護する気など全くなく、憤りしかないのですが
もし両親が愛情をこめて育てていたら、犯罪に手を染めていただろうか?
特に角田美代子に至っては、自分の子供に売春をさせる母親って、私には理解出来ない
ここまでひどいことをされても、母親を想い、父親を想っているのですよね。

両親が、角田美代子と言う化け物を作ったのだけど
その両親が、愛情をかけてさえいれば、化け物にはならなかったのではないか?と、思えてならない

のどから手が出るほど欲しかった、家族団らんと両親の愛情を
親戚は簡単に手にしていて、それが美代子には耐えられなかったのではないか?
お金目的と言うより、親戚を妬んでいるようにも思えたし、お金で寂しさを紛らわしているようにも思えた
もちろん、許すことは出来ないけれど、美代子も加害者であり、被害者
逮捕されてから同房で一緒だった方の証言は、切なくて仕方なかったです。

それでも、あなたのせいで、遺族が苦しみ、悲しみ
あなたのせいで、被害者はいまだにトラウマと戦っているのだから、最後の尻拭いぐらいしてほしかった
どういう理由があろうと、自殺なんて卑怯です


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