以下転載です。
内部被曝の危険性
「東京に空が無い」って言ったのは、高村光太郎の奥さんの智恵子だけど、今の東京の人たちは、みんな口をそろえて「東京に水が無い」って言ってると思う。あたしが東京にいた3月15日や16日の時点でも、すでにスーパーからミネラルウォーターが消え始めてたけど、ここに来て、東京の浄水場からも放射性物質が検出されたもんだから、都内どころか関東一円は、どこに行ってもミネラルウォーターが売り切れ状態だ。
枝野さんは、相変わらず「ただちには健康に影響のないレベル」って言葉を繰り返してるけど、「乳幼児には飲ませてはいけない」って言われたら、大人だって飲むのは恐いし、小さい子供のいる親ならナオサラだ。乳幼児には危険だって言われた水を、5歳の子供にはガブガブと飲ませられる親なんてメッタにいないと思う。それに、次の日に「もう基準値を下回りましたから安全です」なんて言われても、そんなもん信用できない。昨日、浄水場の水から基準値を上回る放射性物質が検出されたのなら、翌日は、ちょうど各家庭の水道の蛇口から出るころなんじゃないの?
大気中の放射性物質にしても、海に流れ出た放射性物質にしても、すごく濃い場所と薄い場所があるんだから、水道水の場合だって一緒だと思う。たとえば、浄水場の水から基準値の2倍の放射線物質が検出されたとしても、東京中の各家庭の水道の蛇口から、まったくおんなじ濃度の水が出るとは限らない。あるエリアの家庭では、浄水場とおんなじに基準値の2倍の水が出るかもしれないけど、別のエリアでは1.5倍かもしれないし、別のエリアでは3倍かもしれない。
オマケに、テレビで専門家が言ってたけど、水道水に含まれた放射性物質の場合は、浄水器を通しても沸騰させても意味がないそうだ。つまり、そのままゴクゴクと飲むだけじゃなくて、お味噌汁を作っても、ご飯を炊くのに使っても、放射性物質はそのまま残り、食べた人の体内に蓄積されてくってワケだ。だから、ホントに安全かどうかを知りたければ、各家庭が放射性物質の測定器を買って、自分ちの水道の蛇口から出る水を検査しながら使うしかない今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、放射性物質が人体に害を与える「被曝」には、体の外からの「外部被曝」と、口や鼻、傷口なんかから体内に入って起こる「内部被曝」があるんだけど、何よりもヤッカイで恐ろしいのが、この「内部被曝」だ。ま、あたしがアレコレ書いても信用しない人もいるだろうから、まずは、社団法人「日本薬学会」の薬学用語解説から、「内部被曝」についての項目を紹介する。
「内部被曝」
食物や空気中に含まれる放射性物質を体内に取り込み、それから発せられる放射線を体内で受けることを内部被曝または体内被曝という。一方、体外に存在する放射性物質やX線発生装置などから放射線を受けることを外部被曝または体外被曝という。外部(体外)被曝は放射線を受けているときに限られるが、内部(体内)被曝は放射性物質が体内にある限り続く。γ線やX線は物質透過性が高く、外部(体外)被曝によって体内の深部にある細胞にも影響を与えうるため、外部(体外)被曝に注意する必要がある。β線は皮膚表面近くで吸収されるため、外部(体外)被曝でも皮膚への被曝として取り扱われる。一方、α線は飛程が短く、直接皮膚と接触させなければ、外部(体外)被曝による影響を受けることはほとんどないが、体内に取り込まれた場合には周辺の細胞に莫大なエネルギーを与えるため、内部(体内)被曝の影響は極めて大きい。
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D
これを読めば分かるように、おんなじ量の放射性物質でも、体の外側を被曝した場合には大したことがなくても、口や鼻から体内に入って内部被曝した場合には、大変なことになるケースもあるワケだ。だから、空気中や水道水に混じって拡散してて、口や鼻から体内に入る危険性のある放射性物質について、「レントゲン撮影とおんなじレベル」だの「飛行機に乗るのとおんなじレベル」だのって言うこと自体が、トンチンカンなゴマカシだってことだ。
もちろん、放射性物質の中には、体内に入っても数日から数週間のうちに、オシッコと一緒に体の外へ排出されちゃうものもあるけど、中には、放射線の量が半分になる「半減期」が何十年なんてものもある。たとえば、今回、牛乳やホウレンソウや水道水から検出されたヨウ素131とセシウム137の場合なら、ヨウ素131の半減期はわずか8日だけど、セシウム137の半減期は30年にもなる。そして、ヨウ素131もセシウム137も、だいたい100日から200日で対外に排出されるけど、定期的に飲んだり食べたりするものに含まれてれば、体内に蓄積されてくだけだ。
で、半減期がたった8日なら、ヨウ素131は大したことないかって言うと、そんなこたーない。ヨウ素131は、セシウム137の数千倍の放射線を出し続けるからだ。つまり、ヨウ素131は、短い期間に大量の放射線を出し、セシウム137は長い期間に弱い放射線をジワジワと出し続けるってワケで、どっちもそれぞれにヤッカイなのだ。ヨウ素131は甲状腺に蓄積するため、特に子供が甲状腺ガンになるし、セシウム137は筋肉に蓄積するため、白血病や全身のガンになる。
今回は、ものすごく広範囲にヨウ素131とセシウム137が拡散したから、土壌や水質の汚染に関しては、半減期が30年もあるセシウム137が問題になる。簡単に言えば、今回の事故で汚染された土壌では、今後、最低でも30年は農作物を作ることができない。もちろん、これは、今すぐに原発のダダ漏れが止まった場合の話であって、現在も高濃度の放射性物質が漏れ続けてて、未だに止める手立てもない状態なんだから、この先、もっと酷くなることは確実だろう。
‥‥そんなワケで、福島第一原発の事故が発生してから、来る日も来る日も記者会見を行なってる東京電力と原子力安全保安院だけど、未だにまったく報告しないのが、何よりも恐ろしいプルトニウムについてだ。皆さん、ご存知のように、ボロボロのメチャクチャに壊れてる3号機は、他の原子炉と違って、ウランにプルトニウムを混ぜた「MOX燃料」を使ってるプルサーマルだ。つまり、3号機の原子炉から燃料が漏れてたとしたら、プルトニウムも拡散してるってことになる。
3号機から立ち上る白煙を「使用済み核燃料のプールからの水蒸気」だと言い張ってきた東京電力と保安院だけど、黒煙に関しては「原因不明」ってノタマッた。だけど、地震が起こった時、3号機は稼動中だったんだから、建屋の中に可燃物は何も置かれてなかった。可燃物が何もない上に、建屋がふっ飛ぶほどの大爆発を起こしてるんだから、黒煙を上げながら燃えるものなんて何もないハズだ。それなのに、ずっと黒煙が立ち上ってる上に、足もとに溜まってる水は通常の1万倍もの放射線の値を示してるんだから、小学生が考えたって原子炉が破損して燃料の一部が漏れ出してることくらい想像がつくだろう。そして、もしもそうだったとしたら、プルトニウムが漏れてるってことになる。
プルトニウムと言えば、「地球上でもっとも毒性の強い物質」ってワケで、長崎に落とされた原爆に使われてたことでもオナジミだ。原爆が爆発したあとに降って来た「死の灰」には、大量のプルトニウムが混じってて、爆発の被害を逃れた多くの人たちも、その「死の灰」を吸い込んだことによって、プルトニウムによる内部被曝の犠牲になった。さっき、ヨウ素131の半減期は8日、セシウム137の半減期は30年て書いたけど、プルトニウムの半減期はこんなもんじゃない。なんと、2万4000年なのだ。
そして、プルトニウムの放射線量は、ヨウ素131の1兆分の1ほどの微量なものだけど、何よりも恐ろしいのが、プルトニウムの出す放射線が「α線」だってことなのだ。ここで、最初に紹介した社団法人「日本薬学会」の「内部被曝」についての解説をもう一度、読んでみてほしい。「β線」のヨウ素131も恐ろしいけど、プルトニウムの恐ろしさはそんなもんじゃない。たとえば、ウランも「α線」だけど、ウラン235の場合なら、1年間に2ミリグラムまでなら体内に入っても大丈夫とされてる。だけど、プルトニウム239の「α線」はウラン235の3万8000倍だから、たった0.00005ミリグラムでも体内に入ったら終わりなのだ。
体内にプルトニウムが入ったら、半永久的に肺の中で放射線を出し続けて、血液によって全身へ運ばれて、肝臓、骨、リンパ節などに蓄積されて、体外にはほとんど排出されない。長崎の原爆で「死の灰」を吸い込んで内部被曝した人の中には、60年を過ぎても体内のプルトニウムが放射線を出し続けてた例もある。そして、その人が亡くなったあとも、周囲に放射線を出し続ける。そして、半減期は2万4000年だから、もしも土壌を汚染してたら、そのエリアは完全にアウトだ。あたしたちが生きてる間どころか、遥か未来の彼方まで、人間はその土地で暮らすことはできなくなる。
‥‥そんなワケで、数日前の会見で、記者から「3号機からはプルトニウムが漏れてるのでは?」って質問された東京電力の担当者は、奥歯にモノのはさまったような顔をして「計測できていません」って繰り返すだけで、漏洩の可能性すら認めようとしなかった。ヨウ素131やセシウム137に関しては、次々と計測値を発表してるのに、記者から質問されなければ、プルトニウムの「プ」の字も口にしなかった。まるで、プルトニウムに関しての戒厳令でも敷かれてるかのようだった。ま、六ヶ所村の核燃料リサイクル施設で、これからプルトニウムを混ぜた「MOX燃料」を大量生産して、全国の原発を次々とプルサーマル化してこうって時だから、これほどの大事故を起こしても、あくまでも漏れたのはヨウ素131とセシウム137だけで、プルトニウムは漏れなかったってことにしときたいんだろう。だけど、たった0.00005ミリグラムでも体内に入ったら命取りになることだけは分かってるんだから、せめてもの自己防衛手段として、あたしは、これから死ぬまで、飲み物や食べ物だけには気をつけてこうと思った今日この頃なのだ。