音信

小池純代の手帖から

日々の微々 240812

2024-08-12 | 歌帖

    初冬偶成       一九九八年作

  皓月空庭百草萎
  荒籬揺落葉埋池
  寒窓凭几孤灯下
  忘刻営営写古詩

    皓月の空庭百草萎え
    荒籬揺落して葉池を埋む
    寒窓几に凭るる孤灯の下
    刻を忘れ営営として古詩を写す


        §


     冬のはじめのおもひつき

  月白く庭はむなしく一斉に一切の草しなだれ萎ゆ

                 一切:いつさい   萎:しな


  葉時計といふものあらばこのやうに落ち葉にうもれてゆく池の虚

                                   虚:うろ


  ともしびはひとりにひとつ然は言へどひとつひとつに影の伴侶

                 然:さ              伴侶:ともづれ


  いまはいつ否いまはいまあたらしき墨もて写す古詩の一篇









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