音信

小池純代の手帖から

雑談27

2021-10-11 | 雑談
芹の続き。

「叡知の蛇──茂吉における定家嫌悪症由来」を読むつもりで

 塚本邦雄『花月五百年 新古今天才論』
     文庫/単行本

   
 
を開いたところ、
植物および食物、食物かつ植物、植物すなわち食物、
に関する記述が予想される項目が目次に並んでいた。
目を奪われている間に「叡知の蛇」はどこかに隠れてしまった。

とくに「Ⅲ 古典萬華鏡」の章は植物、食物が目白押し。


そのうちのひとつに、やはりあった芹の一文のタイトルがこれ。

「献芹物語──菜を摘まば沢に根芹や」
漢字はすべて正字)。

「献芹」は、中国産の熟語で、
「長上に意見を具申し、物品を呈上する時の遜称」。
「ありふれた野菜を差上げるとの心」
を表すという。
歌語「芹を摘む」の慣用的な意味からは離れているようでどこかしら近い。

芹の和歌の用例多数。二首のみ引く。
どちらも叶わぬ適わぬ敵わぬ恋の歌。


  芹摘みし沢辺の蛍おのれまたあらはに燃ゆと誰に見すらむ
                      藤原定家

  せりなづな恋の病の飲食の日々金糸雀に肖つつしあはれ
                      塚本邦雄『黒曜帖』

         病:やまひ 飲食:おんじき 金糸雀:カナリア





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