
「僕が疑問を抱いたのは、富野崇本人なら素顔でシティホテルへ行くだろうか、と言う事だ。不倫相手とだよ。
当然この写真は切り張りだと思う。
犯人は木村君を狙った。
そして木村君の写真を入手する機会を持つ人間だ」
「ハアア」
エリカと百合はポカンとしていた。
「本人が動画サイトに削除依頼出してるよ。
正式に詫び状や賠償金払ってるし、名誉棄損罪では訴えられないそうだ」
「何よ。伊都君、犯人知ってるの?」
大輔は凛々しい眉をしかめた。
「内久保沙耶だ。僕と付き合ってた」
エリカはギョッとした。

内久保沙耶はクラス1と言われる美人である。
モデルの様なスタイルと知的で整った美貌は近寄り難いものがあった。
「クラスの男なんて目じゃ無いと言う顏をしてたが、大輔と付き合ってたんだ」
エリカは妙に納得した。
「彼女は見た通りお高い女だ。最近疲れてきて、何気なく木村君のさりげなさを褒めてばかりいた」
沙耶は極めてプライドの高い女性だった。
自分の他の女、しかもエリカの様な平凡な女を好きな男に褒められる事が堪らない屈辱だった。