読書の森

五木寛之 『昭和は遠くなりにけり』



私の若い頃、五木寛之は幾つになっても青春を駆け抜けてる人の様に思えていた。
昭和7年生まれの彼は、高度成長期もマイペースで書いていた。
そう、それは昭和時代の事である。

五木寛之は昭和歌謡、演歌が好きだった。
演歌を怨歌と言われて、なんかカッコよく思ったのはやはり昭和という、感情が後を引く時代だったからかも知れない。

このエッセイの中で彼は「昭和という時代がフェードアウトしていく」と言ってる。
嘆いている訳でなく、淡々と実感を語っているのだ。

例えば中世の今様という流行歌は、熱狂的な人気があったが、数十年で廃れてしまった。
『梁塵秘抄』が残されているから今様の特徴が伝わっているのだ。

夢まぼろしと五木寛之は言っているが、平成が終われば、それ以前の昭和時代は夢の様な時代と言われるのだろうか。



五木寛之は必要があって、今藤圭子の『圭子の夢は夜ひらく』の別バージョン集めたそうである。

何とそれは30以上歌詞が存在していたそうだ。
水原弘、ちあきなおみ、はては根津甚八まである。

この歌が流行ったのは、当時の学生運動もどん詰まりにきた頃。

ちょっと捻った根津甚八の歌詞は、昔の懐かしい酒場の情景が浮かぶ。
一部紹介しよう。
「相槌するのに 困ったか
闘争崩れの 学生(せいがく)が
小便する間に 消えていた
少しつれないぜ」

今私が読むと少し臭い、時代の個性の匂いなのかも知れない。

昭和時代は遠くなり、昭和歌謡は遠くなるが、一生懸命生きてきた時代である。
大事に胸の奥にしまっておきたい。

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