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オール讀物に連載されていた『死の島』も11月号にて最終回を迎えた。
小池真理子の小説は『妻の女友達』
から本作迄ずっと読み続けている。
ほぼ同時代を生きてる人でもあり、彼女の感覚には非常なシンパシーを持てる。
この作品を読んで、「あゝ、とうとうこの人もここ迄来たか」と、かなりショックだった。
なろう事なら、小池真理子さんにはいつまでも「愛だの恋だの」と書き続けていて欲しかった。
この物語の中に描かれる老いや死について、私は理解出来るどころでなく、分かり過ぎる世界だから、現実を認めたくないのだ。
ところが、その思いを裏切り、私は毎回引き込まれるようにこの物語を求めた。
麻薬の様な小説だった。
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高名な編集者だった澤登志夫も老年を迎えて、小説教室の講師をしていた。
妻子と別れ、独り身の彼は人との過剰な関わりを避け、仕事に身を削る事も少なく、淡々と飄々と過ごしている。
離婚の原因となったのは貴美子という才気溢れる美女と交わした濃密な愛である。
離婚後、彼女とも別れを告げてしまった。
この貴美子が癌で亡くなったのである。
まるで自分の死を演出した様に見事に整理された死に方だった。
「死の島」とは貴美子が遺した不思議な魅力を持った絵画だった。
彼はそれを憑かれた様に眺める。
その彼も末期癌に冒された事を知るのである。