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小説教室で彼を崇め憧れる小説家志望の一人の娘がいた。
内側から滲み出る若さを、ダサい服装や髪型、手入れをしないスッピンの顔で押し殺してる一見冴えないフリーターである。
彼女は実の母と、その舅である祖父の許されない関係を垣間見た事の強いトラウマがある。
登志夫は彼女、樹里の持つ文学的才能を認めている。
彼女は彼に深く感謝して、尊敬以上の親しみを感じる。
物語はこの老小説家と小説家志望の娘との、交情とも言えない淡い繋がりを中心に据えて描かれている。
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しかし、私の立場としては、この老小説家の死と向き合う心境が一番興味があった。
自分らしく生きたいと思う以上に、自分らしさを保ったまま死にたいという、彼の気持ちが痛い程伝わってくる。
この不思議な組み合わせの彼と彼女が、それぞれに自分の想像に近い行動をした最終回は、何処か安堵感があった。
登志夫は恋しい貴美子の下に行けなかったとしても、必ず樹里によって再生すると思えたのである。
著者の意図とは全く違うかも知れないが、この凡そ冴えない樹里の将来の大化けを願う気持ちがあったのかも知れない。
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死が我が身に近づいた時、人は誰しも過去を思い出さずにはいられない。
それはもう戻る事が出来ないからこそ、不思議に美しく輝いて見える。
死の島とは遠い過去の夢の島とも思える。
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尚、この作品は来年3月文芸春秋社より出版されます。
時は浅い春、その時世界はどうなっているのでしょうか?
ただ、どんなに現実が変わろうとも、男と女の世界はいつの世も変わりません。
時代に翻弄されても、生と死の狭間に於いても、息をついてる恋を書けたら最高ですね。