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竹村は福原に付いて東京の街を当て所なく歩く。
実は福原は愛する妻を、嫉妬のあまり殺してしまったのだ。
彼は自首する前に足の赴くまま街が歩きたい。
借金の弱みを握られた竹村は、彼に引きずられて行く。
そして二人は様々な人間模様に遭遇する。
根無し草の様な二人が歩く東京の街が妙に懐かしい。
井之頭公園、西荻窪、中野、高田、巣鴨、根津、駒込
古くからある街の路地から大通りへ、大通りから路地へ、ひたすら歩く。
そこに不思議な発見や出会いがある。
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作者は多少の遊び心でこの作品を書いたと思う。
慣れた街の奥深い顔を描く為に、二人の男を転々と歩かせた。
街は普段見慣れた光景と別の姿を持っている。
街はドラマティックだ。
都内のアパート生活をした昔の友人を思い浮かべずにはいられない。
この小説は、小説の形は取っているが実は気ままな町歩きの勧めと思える。