私は『伊豆の踊り子』が一番好きです。
実は川端康成の生誕地と知らずに、大阪市北区天神橋近くにしばらく住んでおりました。
大阪の「キタ」は山手っぽい場所と勝手に思って(ミナミは下町だから)この地を選んだのですが、「キタ」は許容範囲がかなり広いところでした。
閑話休題、川端康成は現在の住居表示で天神橋1-16-12で開業医の父の下、1899年(明治32年)に生まれました。
両親の死後、大阪府茨木市に移り、一高入学後関東圏に居住してます。
注:
本日載せた写真は生憎川端康成とは無関係の北区内の写真です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/74/b0c9629575dfe753be3f389f8e9b6982.jpg?1697869020)
両親は旧家の生まれで勤務医だった父は結婚を機にこの地で開業しました。
もともと身体が弱いのに、無理が祟って結核で夭折します。母も後を追うように結核で亡くなる。
当時結核は不治の病だったのです。
この時康成はたった2歳に満たなかったのです。物心ついた時に親はいないのです。
父が遺した些かの財産を年金の形で受け取り、親戚に預けられました。
不幸は続くというか、そのあと次々と血縁の死に遭い(姉も祖父母も)、不安定で孤独で人の顔色を見てしまう育ち方をしたようですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/98/3bafc42253e74e21f53a93e26fa6a784.jpg?1697869020)
そんな彼にとって、自分を丸ごと受け止めてくれる友人の存在はまさに救いだったのでしょう。
実は彼自身で初恋と言っているのは年下の同性です。中学時代寄宿舎で寝起きした同室の男子。
夜中に寂しくて抱き合った位の関係だったそうです。
しかしこの友人の優しさに彼は救われたと言います。
川端康成はこれを「温められ 清められ 洗われた」と表現された。
不幸にささくれだった繊細な神経が温和な友人と暮らす事で安定したと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/0e/b64ec1f84b8855a3ab2a8a576f2b14cb.jpg?1697869020)
彼にとって究極の愛とは肉親の(特に母親的)愛だったようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/0e/b64ec1f84b8855a3ab2a8a576f2b14cb.jpg?1697869020)
彼にとって究極の愛とは肉親の(特に母親的)愛だったようです。
が、対象が女性に向けられた時は相手の無垢さを先ず第一に求めます。彼が20歳の時カフェで働く13歳の貧しい生まれの初々しい娘を見染めたのです。
その子の援助をしながら、作家として収入の目処がついた3年後、婚約します。
婚約記念の写真には緊張した顔の康成とほっそりとした大人しそうな娘が写ってます。川端の友人は皆それを祝福して、彼女の貧しい親も感謝する。
ところが、婚約間もなく彼女から一通の手紙が届いて、姿を消してしまいます。
手紙には丁寧な詫びと共に「私には非常のことがある」と謎めいた文句が綴ってありました。
今の東大を出た秀才、文学の素養高い川端康成さんはこの意味が分からなかった(?)そうです。
有り体に言えば(私の勝手な解釈ですが)、「あなたよりいい人がいっぱいいるから」が書けなかっただけでは?
彼女はのちに水商売で活躍し、その世界の人と結婚、東京の浅草の繁華街一の美女と言われたそうです。
康成は無垢だと思う彼女に一指も触れなかった、ただ目線で追うだけ、それを美しい文章で表現して小説にする
それが、彼女にとってとても気持ち悪かったんじゃないのでしょうか?
川端康成氏の目の大きさや鋭い光は有名です、しかも痩せてらっしゃる。抱きしめるどころか手も触れずに、ギョロギョロ(と感じたのでないか)と長い時間凝視されたら、、。「愛されてる」とは思えないです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/33/ce4d322b985c18c642d89fccea9e7b85.jpg?1697869020)
彼にとってこの恋の終わりは大変な打撃だったらしいです。後々迄深い傷となりました。
事情を知る友人達(全員男性)はこぞって彼に同情して、特に文学者は彼の道を開いてくれた。
それから康成は一路小説作りに邁進。
「野の匂いがある正直な好意」を寄せてくれた旅先で出会った踊り子を主人公にした私的小説『伊豆の踊り子』が上梓されて作家としての地位を固めるのです。
彼は住み込みでお世話してくれた素直な女性と結婚してます。
写真で見ると明るい感じの綺麗な奥様です。初恋(?)の女性とかなりタイプが違う印象。
波乱の少ない家庭生活でしたが、川端康成の描く世界は非日常的で刺激的なものです。
多分、平穏な家庭生活でバランスをとってらしたのでしょうか。
手塚治虫もそうだったし、昔の文学者の奥様は目立たない場所にいらしたようです。