読書の森

ジェラシー



その郊外のバス停で田所奈美は待った。
同じ様な時刻、判で押したように佐伯萌は帰宅の途に着く。

萌の行動を探偵を雇って探った。
萌は図書館の司書を務める。至って真面目な一人暮らしを送っている。決まった時間に出勤して決まった時間に帰宅する。
それが奈美には気に食わない。
もっと野心的で活動的な女であれば、きっと夫は嫌がったろうに。

奈美のバックには、萌の写真が入っている。男子校で女子が少ないので萌はその写真の紅一点だ。夫の泰も嬉しそうに肩を寄せる。
萌の素直な笑顔が憎い。
41と言う歳が嘘のような若さだ。
よく学校の図書室で一緒になったと夫から聞いた。

去年の暮れに泰の高校の同窓会があってから、泰は妙に生き生きしてきた。
同窓生とメールの交換をしたり、写真を送り合ったり、42歳の男とは思えない程はしゃいでいた。



酔った夫の背広のポケットに大切そうにしまわれたデジカメの写真を見た時、目が眩みそうな嫉妬を感じた。

写真を泰に突き付けると最初は狼狽して、次に開き直った。
「これ、俺が一番よく撮れてるだろう。記念にちょっと入れといたんだ」

大手の商社で営業を勤める泰に誘惑も多い。
火事にならない内に奈美は揉み消す。

25で結婚し、40の今日まで二人の子どもを健康に育てて、家庭を守ってきた。
専業主婦を続けてきたのも、皆泰の為である。
「お前は家に居てくれ。他の男に盗られたくない」
情熱的な泰のプロポーズに心が蕩けた。

見る影も無いおばさんになった今、夫の行動が不安になる。
夫は確かに萌が好きだ。
何回か電話もしてる。

二人はこっそり密会してるのでは?
探偵にも漏れがある。
本当の事を確認したい。
不安が募って、大胆な待ち伏せ行為になった。


(続く)

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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