読書の森

台所奮闘記


高田老松町の下宿に引っ越すとき、購入したものは電気炊飯器だけだった。
そして、引っ越しの翌日から、私は念願の(本当にその年までの念願だった)自炊を始めた。
最初に取り掛かったのがおむすびである。

前年、小諸合宿中、皆でハイキングに行くときおむすびを作ったが、私はどうしても三角形に握れない。
自分の作った🍙はいびつで丸く恰好悪いので恥ずかしかった。

そこで、女子栄養大学のテキストを広げ、三角のおむすびの作り方を暗記して、実行(?)した。
ごはんが熱々のうちに手を水で濡らし、塩を適量取って、中をふんわりさせて握る。
今は手が覚えてしまっている握り方を、その時は試行錯誤で繰り返したら、目の前に大小の個性的な🍙が並んでいた。

隣の跡見の女の子と一緒に食べるのが、片付けるのに手っ取り早いが、みっともなくて見せられるものでないと、その日のうちに自分のお腹に入れてしまった。

次にお味噌汁を作る。
出しは、煮干しが一番味が出るという。
煮干しの頭を取り、乾煎りして、水からつけて、とテキスト通りやったが、どうも生臭い。
後から分かったが、煮干しの量は少なく、はらわたも取りじっくり出しを取ると良い。
それに、お味噌の味がやはり味噌汁の決め手のようである。

ということで、料理研究に肝心の学問以上に情熱を燃やしていた頃、およばれに預かった。
跡見の女の子のアルバイト先の先輩のアパートだという。

木造アパートの狭い階段を上がって訪問すると、綺麗にお化粧したスリムな女性が迎えてくれた。
私たち芋姉ちゃんと比べ、大人の女性という印象があった。

その部屋には、なんと彼女の恋人まで先に訪問していた。
その男、ニヤついて感じ悪かったが、ともあれ彼女のスパゲティをご馳走してくれるという言葉に惹かれて長居してしまった。

そこで食べたのが、スパゲティナポリタンである。
まだ、スパゲティ作りは未開拓なので、興味津々だったが、今一コクがなかった。
それでも、「おいしい、おいしい」とその恋人はますますニヤニヤしてる。

私たち二人がしらけたところに、彼女はサッサとサラダを作って出した。
それが美味しかった。
玉ねぎの薄ーく切ったものに酢醤油をかけ、パラっとかつぶしをパラっと載せて、レモンの薄切りを上に置く。

とってもさっぱりしていた。

と本業の学生はそっちのけで料理に燃えた時代でもあった。






読んでいただき心から感謝いたします。

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