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俊はキャップの谷に熱心に相談した。
「亡くなった母に俺は誓ったんです。
真実を追及する記者になると。
早く第一線に戻るためにも、自分に起きた事を知りたいのです」
谷はしわの深い顔は笑っているように見えた。
「我々だって、君の様に機敏な取材をする男をお客様扱いしたくないさ。
ただ、今はドクターストップがかかってる」
「医者の言う事だけが正しいとは限らないです!」
「では聞くが君の母上はいついなくなられたのかね」
ふいに俊の頭が痛くなった。
ふっくらと白い母の笑顔と若い声が浮かぶのに、その母がいつどこで消えたのか覚えていない。
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混乱してる俊に暖かい視線を投げかけて、谷は言った。
「ドクターは周りの人の目で大丈夫なら、冒険をしてみてもいいと言う」
俊は目を輝かした。
「今の君は健康そのものだ、一つ冒険をするか!明日は飲みに行こう。俺は遅れるが待っててくれ」
唐突な言葉だった。俊は面食らった。
「何処へですか?」
「S駅近くの小料理屋だよ」
承知した後、俊は考え込んだ。
谷は何故唐突に誘ったのだろう。
母の死に方は普通でなかったのか?
その秘密が今分かったのか、分かっていたが今なら明かせるのか?
妄想は膨らむが、現実と一致するか定かではない。