読書の森

東海林さだお『男の分別学』 前編



東海林さだおはエッセイストで漫画家である。
サラリーマンの哀歌を描いた漫画が面白いが、それは年功序列が当たり前だった昭和の香りがする。
多分、今のサラリーマンはもうちょい個人主義だと思う。

雑誌に連載されてる『男の分別学』は笑えるエッセイである。
多分おじさんたちに人気がありそうだ。

これは昨年の秋、読書週間を話題にしたエッセイだ。
何でも東海林さだおはこの機会に古典名作をものしようとドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読み始めたそうだ。

しかし、最初の15行を読み出して、雑念が入り頭に全く入らない。
おととい読んだ宇能鴻一郎の本が懐かしくなったとか。
宇能鴻一郎とは何者か?
実は昔のエロ小説の大家である。

このように、人間の脳はどうも易きに流れがちである。
雑念そのものを楽しむ事に向いている様なのだ。



難解過ぎる本を読むと雑念に悩まされるという事だ。
ここで東海林さだお先生は
「脳の本業は雑念であって、集中力はついでの仕事である」
と言う。

実はこの説は、心理学者マイケルコーバリスの『意識と無意識のあいだ』に出ている一節だそうだ。

東海林さだお先生は突然三橋美智也の歌謡曲、「トンビがくるりと輪をかいた」と言うメロディが脳内を駆け巡った経験があるそうだ。

私も無意識の内にあるメロディが脳に流れてくる事がある。

「貴様と俺とは、同期の桜」なんて
軍歌が駆け巡ると思えば、
「諸人こぞりて 迎えまつれ」
という賛美歌が高らかに鳴り響く。

私は
「こんな世の中を反映して完全におかしくなったか」
とゾッとしてた。

マイケルコーバリスによると、心理学では正式に認められている現象なのだ。
心理学用語で「イヤーワーム(耳の虫)」と呼ばれてる。

読んでいただき心から感謝いたします。

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