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2023年10月2日、朝日新聞社
性的マイノリティーの人たちの生きづらさの解消につなげたい――。そんな思いを胸に、いわき市の高校生が全国から集めた署名が約5千筆に達した。こうした動きを背景にいわき市内では「ジェンダーレス制服」を導入しようとする中学校も出てきた。
いわき市の高校3年生割谷(わりや)洋恵さん(17)は7月、「多様性を認め合ういわき市を目指す会」のキックオフイベントを開いた。性的マイノリティーを理解し、支援する人たちは「アライ」と呼ばれるが、割谷さんもその一人。会の仲間には、同市の当事者やアライ約10人がいる。
「性差にもとづく生きづらさ」に関心を抱いたきっかけは高校1年生の冬。複数の企業訪問で、役員の肩書がある人の多くが男性で驚いた。「学校では女性が生徒会長やホームルーム長として活躍しているのに、社会に出たら先頭に立つのは男性ばかりなのか。私が働くころには、もっと多様な価値観が当たり前の社会になっていてほしい」との思いが芽生えた。
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さらに今春、同市で開かれた性的マイノリティー当事者らの交流会に参加し、「多様な性」を知った。「親にも話せない」「いわき市では生きづらく、都会に出た」などの体験談を聞いた。
電通グループの調査によれば、日本在住の20~59歳では9・7%が性的少数者の当事者という。身近にいる当事者が偏見や差別にさらされている事実に心が痛かった。
仲間と勉強会や話し合いを重ね、同性同士などのカップルの関係を公的に認めるパートナーシップ制度などの導入を市に求める署名活動を始めた。10月、全国から集まった5228筆を市に提出した。
制服の選択制も要望に盛り込んだ。毎日着る制服だが、男子がスラックス、女子がスカートと決まっていることが多い。その苦痛が不登校の原因になることもあり、要望書では「着たくない制服で学ぶ権利を侵害されてしまうのは問題」と指摘した。スラックスは防寒の側面もあり、「選べることでメリットがあるのは性的少数者だけではない」とも思う。
文部科学省は2015年、本人や保護者の意向を踏まえ、自認する性の制服や体操服などを認める支援ができると通知した。埼玉県では23年度から全ての県立高校で女子生徒がスラックスを選べるようになるなど、各地で導入が広がる。一方、福島県教育委員会の担当者は「制服については各学校の判断。悩みがあれば個別で相談してほしい」としている。割谷さんは「当事者からは言いだしにくいし、各学校の判断では進まない。県全体で方針を示してほしい」と訴える。
当事者でなくても、困っている人がいる現状を知ることはできる。「アライ」として応援できる。署名なども追い風となり、いわき市立のある中学校では来年度から自分の好みに応じてスカートやスラックス、リボンやネクタイを選択できるジェンダーレス制服が始まる。
「制度の導入や署名活動そのもので、私たちの価値観や問題意識が、より幅広い世代に広がることを期待したい」(力丸祥子)