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Ω3脂肪酸の肺への効果

2023-08-03 10:16:57 | コロナウィルス

about Health DHA - PROGRESS BIOTECH

Docosahexaenoic acid (DHA, cervonic acid) molecule

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で病床が埋まり、人工呼吸器が足りなくなった際には、多くの人が肺疾患の恐ろしさを目の当たりにした。

 残念ながら、肺の機能は新型コロナのような呼吸器疾患によって損なわれるだけでなく、加齢によっても低下する。また、病気や化学物質などへの暴露、加齢が原因で起こる腫れや炎症によって気道が部分的にふさがれ、呼吸が制限される場合もある。

 今回、新たな研究により、抗炎症作用をもつことが知られている「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる栄養素の摂取が、肺機能の低下を緩やかにすることが示された。この論文は2023年6月23日付けで医学誌「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 」に発表されている。

「オメガ3脂肪酸が心血管疾患の予防に役立つことはすでに示されていましたが、それ以外の慢性疾患に対する効果は、今回の研究以前にはわかっていませんでした」と、米アリゾナ州メイヨークリニックの呼吸器科医アナ・サモラ・マルティネス氏は言う。氏は今回の研究には関わっていない。

 この研究の意義は、「肺を健康に保つうえでのオメガ3脂肪酸の重要性を初めて示した」ことにあると、氏は述べている。

体内におけるオメガ3脂肪酸の重要性

 単に「オメガ3」とも呼ばれるオメガ3脂肪酸は、特定の構造にもとづく脂肪酸の分類のひとつだ。米国立衛生研究所(NIH)栄養補助食品室(ODS)によれば、心臓や脳の健康増進や、免疫系の強化、血圧の低下、ホルモンレベルの改善に役立つとされている。

 代表的なオメガ3脂肪酸としては、α(アルファ)-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の3つがある。

「個々のオメガ3脂肪酸は、化学的にも生理学的にも異なることを知っておくことは重要です」と、米バージニア州で活動する管理栄養士のジル・ワイゼンバーガー氏は説明する。体内でオメガ3脂肪酸を作ることはできないため、バランスのとれた食事によって摂取する必要がある。

 ALAの摂取に向いている食材は、クルミなどのナッツ類、栄養強化卵、大豆、アマニ油、エゴマ油などに含まれる陸生植物の油だ。DHAやEPAは、サーモン、マグロ、サバ、イワシ、ニシンなどの海産物に含まれている。「それ以外の魚介類にもオメガ3脂肪酸は含まれていますが、量としてはかなり少なくなります」とワイゼンバーガー氏は言う。

 陸と海のオメガ3脂肪酸はどちらも大切だが、米マサチューセッツ総合病院の医師ウマ・ナイドゥ氏によると、海の脂肪酸の方がより重要だという。

「これらの必須栄養素を取るのにわれわれは魚に依存していますが、興味深いことに、そうした魚はEPAやDHAを自らの体内で作るのではなく、餌にしている藻類から得ています。人間もその藻類を食べればよいのです」

 いずれにせよ、これらの栄養素を摂取することは極めて重要だ。米心臓協会(AHA)は、魚を週に2回以上食べることを推奨しているが、米国人のオメガ3の摂取量は「ひどく少ない」という。(参考記事:「低炭水化物・高脂質のケトジェニックダイエット、心臓に「最低」」

 米心臓協会は、「心臓病と脳卒中のリスクを低下させる」ためにオメガ3脂肪酸を食事に取り入れることを勧めているが、今回の研究は、オメガ3脂肪酸が肺にとっても重要であることを示している。

オメガ3脂肪酸と肺の健康

 新たな研究では、まず、米国人1万5000人以上の血液サンプルデータの分析を行った。サンプル提供者の健康状態は、平均で7年間にわたって追跡されていた(ただし、追跡期間が20年に及ぶ対象者も多かった)。参加者は人種的に多様であり、平均年齢は56歳で、人数は女性の方がやや多かった。

 すべての参加者の血液サンプルを測定することにより、オメガ3脂肪酸と肺機能(肺活量や最初の1秒間に吐き出す空気の量)の加齢に伴う低下の度合いとの関連を見いだしたと、米コーネル大学の栄養学者で、同研究の著者の一人であるボニー・パッチェン氏は言う。

 この発見を裏付けるために、研究チームはさらに、英UKバイオバンクなどのヨーロッパ系の人たちの大規模データを分析した。すると、「オメガ3脂肪酸の(血液中の)濃度が高い人ほど、肺の健康が保たれている」ことがわかったと、NIH傘下の米国立心肺血液研究所で肺疾患部門長を務めるジェームズ・P・カイリー氏は言う。

「われわれが採用した2重のアプローチは、今回の発見をより厳密なものとするための手段でした」と、コーネル大学の栄養科学科長であり、同論文の共著者のパトリシア・アン・カッサーノ氏は言う。

 両方の分析結果は、これまでは十分に確立されていなかった相関関係を明らかにしている。「この研究は、オメガ3脂肪酸と肺の健康との関連を示すこれまでで最も強力な証拠であり、オメガ3脂肪酸を食事に取り入れることの重要性を改めて示すものです」とパッチェン氏は述べている。(参考記事:「病気のリスクを下げる食事とその仕組み、健康で長生きするために」

今後の研究

 今回の研究で対象とされたのは健康な成人のみで、多様なグループの人々が含まれていなかったと、パッチェン氏は言う。そこでチームは現在、ヘビースモーカーや慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者など、健康状態が良好でない人々のオメガ3脂肪酸の血中濃度も評価し、今回の研究と同じような関連性が見られるかどうかを調べている。

 カイリー氏は、こうした研究をもとに、「いずれは慢性肺疾患のリスクが高い人々に、個人に合わせた食事内容を推奨できるようになるかもしれません」と話す。(参考記事:「一人ひとりに適した食事示す「精密栄養」、大規模研究が米で始動」

 

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/072700390/?P=1&ST=m_m_news

Ω3脂肪酸

https://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%A9-3%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/05.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_27/_pdf/-char/ja

 



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