忘れえぬ一枚

2009-07-26 17:18:53 | Weblog
冷気に反射する朝陽の中で、霞むような街並みを背景に、
物憂げに馬車の上からこちらを見下ろす女性。
黒いコートに身を包み、黒い帽子には駝鳥の羽飾り
そのまなざしに目をやると
一瞬たじろぐような強い光を感じます。

この絵が日本に初めてやってきたとき
美術館へ足を運びました。
生絵を目の当たりにしたときの衝撃は忘れられません。

この絵の原題は「見知らぬ女(ひと)」とされています。
もしかしたら画家クラムスコイも通りすがりに一瞥(いちべつ)しただけの女性であったかもしれません。
この絵が日本で紹介されたとき、誰が銘付けたのか「忘れえぬ女(ひと)」とされました。

この絵の技法(構図<見る者との間に適度な距離感を作っている>や描写力)の高さや憂いを含んだ視線が、見る者誰にもインパクトを与えるところから、「見知らぬ女(ひと)」とありきたりな画題は、この絵のもつ完成度にふさわしくないと日本の関係者が感じたのでしょうね。

クラムスコイがこのモデルに関する記録を残さなかったこともあり。記録が無いことがかえって見る者の想像力を掻き立て、絵にドラマ性を与えています。

・初恋の女(ひと).....なのだろうか?
・幼なじみで良家へ嫁いでいった○○ちゃん.....なのだろうか?
・守ってあげたいと想っている女(ひと)....なのだろうか? etc.

忘れようと心に決めた女(ひと)なのに忘れられない....

むかぁ~し流行った連続ラジオドラマ「君の名は」の冒頭のナレーションを想い出しました。(アマルは生まれていませんが

「忘却とは忘れ去ることなり、忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」


そういう経験をされてる人もいるでしょうね。 

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