Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

能、 杜若 須磨源氏

2021-05-24 | Théâtre...kan geki
6月1日の薪能@平安神宮も緊急事態宣言を受けて中止になり、意気消沈していましたが、23日の観世会は会員ばかりということで、開催になりました。
さあ行くぞ!と意気込みながらも、まあ色々家族から呼ばれて、仕事や雑用やを片付けてから出かけることになるので、1日どっぷり観能するわけにはいかず、杜若に間に合うかな…というタイミングで入りました。

実は先日、
約30年ほど前に亡くなった祖父の謡本を実家から送ってもらい。ぜひそれを見ながら、観たかったのです。


祖父の筆跡なんて初めて見るかもしれない。
家族も、祖父の能の趣味なんてすっかり忘れていて、父の実家を片付けた母と叔母が、「ああ!そういえばこんなものもあるんだったわねえ」という感じに思い出してくれて、祖母の着物と一緒に送ってくれました。


基本の100番は揃っているかなという量です。

須磨源氏はなかったので、観世会館に出店している檜書店さんで、例によってお買い上げ。2,500円也。これが100冊というと、25万円の価値があるのよねえと、感謝しきり。

軍医を経て町のお医者さんとして暮らしていた祖父のことを、わたしはほとんど知りません。お盆とお正月に集まっても、従兄弟たちと遊ぶばっかりで、あんまり会話しませんでした。
「みかん食うか?」「はい」くらい。
わたしの父も、小学校5年生頃から、学校の関係で逗子のいとこ宅で暮らしており、両親とあまり接点がなかった少年時代だそうで。
戦中戦後の世情や人情を、同じ本を手に取ることで、少しでも窺い知ることはできるだろうか…と期待しましたが、やはりよく分からず…
でも、謡本に挟まっている発表会番組表なんかは臨場感があり、手に汗する気持ち、おじいちゃんも味わったかしら?と空想しました。

それはともかく、杜若です。


季節にぴったりの題目、、、
紫色の花が群生する景色を思い浮かべながら、後半の舞の複雑な型を目で追っていました。
おシテの片山伸吾先生は「だんだんトランス状態になった」とその日の感想でおっしゃっていて、厳しい稽古を越えた先にあるトランスは神の領域であろうと思いました。


それから、夢うつつを、田茂井先生と大江先生のお仕舞で現実に戻していただいて、
須磨源氏。

世阿弥の作と言われていて、節回しはどうなのかしらと謡本を凝視です。

ところで、この日のワキ方が素晴らしかったので、覚えておきたいと思いました。
高安流の御三方。
京大文学部卒→能楽師
になられた有松さんという方の経歴が、「へー」です。

シテ方は大人になって入られることはなかなかないので、面(おもて)も舞もないワキ方だからこそ、フレッシュな人材がこうして自分の意思で入られるのはすごくいいなと思いました。
大樹の周りに咲く色とりどりの花、といった風情のワキ方の皆様でした。
そしてその謡のかっこいいこと!ぴたりと揃ってすごくかっこよかった。自分でシテをやってみて、ツレと合う事の困難がわかるだけに、プロ!!と思いました。

橋本先生の貴公子ぶりも、素晴らしく優雅で、、おもてを伏せる時の風情にはうっとり魅入られ、もっとこの瞬間が続いたらいいのに、と思いました。
お声も、この世のものではないような透明感でした。
個性を消し型に忠実になることによって、その人の真の格が表れてくる。見事な舞手のお舞台には曇りがなく、いつも澄み切った気持ちで見終わることができます。



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2 コメント

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Unknown (greenrose3)
2021-05-26 07:44:47
平安神宮 薪能も中止になったのですね。

杜若、、、会員の方限定で開催されたのですね。今はそういう形でしか拝見できないというのは仕方ないですが、、、

観たいものを観れる事、行きたいところに行ける事の有難さをこんな状況が続くからこそ痛感します。

お祖父様も能を趣味とされていたのですね。
導かれていたのでは?
これからに役立ちますね💕
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ありがとうございます! (mi)
2021-06-27 20:25:29
1ヶ月遅れのお返事になってしまい、申し訳ありません。
だんだん、街の規制も緩くなってきましたね。また揺り戻しがあるのでは?と、河原町や三条の盛り上がりに危惧を感じつつ。。

はい、ありがとうございます☺️
これから役に立つといいな、、と思いつつ、とにかくは基礎ができてから、の話になりそうです!^^;
祖母の母という人が、実は仕舞が好きな人のようでした。白洲正子さん以前から、能を好む女子も一定数いたのだなあと、タイムスリップをますます想像で楽しんでおります。
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