Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

字を書く姿

2008-01-26 | esthe...kirei wo get
手書きの文字をしたためる。
今ではすっかりそんな「筆まめ」ではなくなってしまいましたが、学校時代は何かと字を書くことって勉強以外でも多かった。と、ふと思い出しました。
今日のお昼に入ったカフェの明るい窓際で、かわいらしい女性が一人、考えをめぐらせる様子で便箋にさらさらと筆を走らせていたのを見て。

人がなにかを書いている姿って、いつでも静謐で厳かな雰囲気です。
年頭の朝、居住まいを正して年賀状のお返事をしたためるパートナーの姿も凛としていました。
ちいさな紙に向かう、その端正な集中を邪魔しないように、丸いテーブルの斜向かいで見守りながら、コーヒーをそろりと飲みました。

なにかと細やかな気遣いに長けた女友達のバッグがとても大きく、
「何が入っているの」
と聞いたとき、中からたくさんの種類のレターセットや筆記具が出てきたのに驚いたこともありました。
仕事帰りや帰宅前のちょっとした時間に、カフェなどで「メールではなく、手紙で」お礼状を書くのが習慣だそう。
そしてある時、
「そんな私には小さすぎるから・・・」
と、大切にきれいに使っていたヴィトンの小さなバケツ型バッグをひょいとわたしに譲ってくれたことがありました。
ムダは最大限省いて暮らす彼女は、レターセットとは常に共に行動し、言葉をしたためる。それがもう完全な習慣となっている。彼女にとっての大事なものの優先順位は、こうなのでした。使わないものは、使ってくれる人にあげるの。と、にっこりしていました。

字を書く行為は、丁寧にする程、気持ちの整理になります。よけいなものが流れていく。
学校時代の同級生には、書道を趣味にしている子がいました。
放課後の書道部の活動後に硯と筆を洗っている彼女の顔は晴れ晴れとしていて、心地良い緊張を堪能した後のきりりとした爽快さがありました。
「手を汚して書いて書いて練習してうまくなるの」
どうしてそんなに字が綺麗なの、と感嘆した折に答えてくれた言葉には、「道」を踏みしめつつ登る力強さがありました。
彼女の字は雄大だけど繊細でたおやかで、柔らかい人柄そのままの美しさでした。

そんなことまでふいに思い出したため、ただ「字を書く」のではなく、書き方からも細かく注意を払おうと、最近ことに思うのです。
意識していなかったけれど、自分の書き癖は全体にけっこう強く、気をつけてみると、座り方から紙の向き、ペンの持ち方等まで直すところがたくさんありました。
しかしそうやってきちんと書いた字は、空気感もちょっと違う。自分的最上級の字になります。
「正しいフォームで練習することの大切さ」
は、ゴルフを始めたことから意識するようになったのですが、ほんとうに暮らしの基本も応用もすべてそこ、「正しいフォームを知る」に始まるように最近思います。

心を落ち着けて、字をしたためる。
自分の精神とそこで向かい合う。
冬のしんとした空気には、そんな光景が良く似合います。


photo...デンマークの海岸にて。
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