くびすじ

最近、目を奪われることが多くて、
「ああ、こここそ、女が女たる箇所だ」
となんだか心から思うのは、斜め横からみた顔と、そこからあごを経て首につながる骨のラインと肌の艶やかさ。首すじ。その輝きが、ぴかっと目を射抜くとき。

厳密にいって、「横顔」ではないの。
横顔も、確かに気になるけど、全体の線がなだらかなアジア人なら、真横から見るよりも、斜め横から見たほうが、たおやかな風情が活きるのではないかしら。
それも、顔だけでなく、横からの上半身のシルエット全体がつながったさまが、より。

水を飲むとき、上方をニコリと見上げるとき、
空を仰いだ表情の晴れやかさと、あごの華奢なライン、無防備に艶めく首すじの肌が、なんとも美しいと誰かを見て思った。

顔は、誰でもケアしているけれども、そして多少はさぼっても強引なリセットが効くけれども、首を同じように美しく保つのは、実は結構難しいらしい。
以前、
「首と手は、美容形成手術が効かないとこなんだって、努力なんだって」
なんて誰かがランチの時に言い出し、みんなでにわかに慌てて、その場でマッサージしてみたりしたことを急に思い出したりする。

わが母も昔から、美容のポイントが首にあると言っていた。
幼少の頃から、まっすぐに伸ばしていた髪が、後頭部から首すじを伝ってまっすぐ背筋に流れ落ちないと姿勢を注意されたし、どんな美女を見る際にも、首の状態をキレイのポイントとしてチェック。

デコルテを気にするなら、当然、首の肌、それも、横からうなじまでも、ケアを怠ってはいけませんね。
ことに重要だと思うのが、首の、横顔。
顔の横顔よりも、首の横顔は密やかで官能的。
めったにスポットを浴びないけれども、恋人をより誘うのは、この目立たない、首すじ。
彼の指が髪をそっとどけて、あらわにされた首すじが、その優しい口づけを受けるときのために。