初秋の能
と銘打って、毎年秋に先生が京都観世会館で舞われます。
今年は「屋島」。
狂言は「清水」小笠原由祠先生(出ていらしただけで、この方は面白いことを言うに違いないと思わせるお顔)
仕舞「実盛」片山九郎右衛門先生
という番組でした。
屋島の間狂言「奈須与市語」は小笠原先生の熱演。印象に残る迫力でした!
小書は弓流、海中に落とした弓を、敵に拾われまじと、義経が馬を乗り入れ、海の波間に拾いに行く手に汗握る回想シーンです。
はりきって予約したS席、いざ行ってみると同じ思いでおられた社中のお弟子さんでほぼ埋まっており☺️、
前も横も、気心知れたお仲間の皆様。
わたしは合戦ならば紅の袋帯!と思って前日から用意したものの、当日、結局うまく結べず、御所車の綴織名古屋帯で苦肉の策を弄したのですが、「源氏尽し!」と言っていただきホッとし、
与市なら扇模様の帯、をしてこられた素敵なお仲間もいて「なるほど!」と、装いの工夫にも楽しい発見があったお舞台でした。
後シテのおもては、「平太」
この雰囲気はなんだろう、見覚えがある…、記憶を辿れば「ウォーズマン」でした。
戦いのために生まれ、戦うことにアイデンティティがある、戦地でしか生きられない人だという印象をより強める面でした。
戦うことは仕事であり文字通り生き抜くためにやらねばならないこと。
純粋にやるべきことを追求してきた義経の幸福とはしかしどこにあったのか、と解説に書かれていましたが、
懸命に生き抜いた輝きがすでに、価値そのものであったとわたしは感じました。
彼に殺された多くの命と、そう仕向けた当時の政治を思うと、野蛮でしかないのですが、その時々の美学を知ることで、現代につながった倫理観に改めて感謝できます。