その幽玄なる世界へ迷いこむ

身をよじりたくなるくらい・・・、
どんなに手を伸ばしても、届かない気がする。
呆然とするくらい。
こんなに遠くに感じながらも見つめてしまうものが、あるだろうか。
手に入ることが夢にしか思えないような気がして涙がにじみかける瞼、、が熱く甘い感触なのは、そうして焦がれること自体が、この身の幸せだからなのです。

・・・と、こんなにも恋する気持ちを味わわせてくれるのは、セルジュ・ルタンスの香り。
お店の、あの香水瓶の並ぶ棚は、実は、現世を離れ異世界へ旅をする入り口だったのです。ご存知でしたか！
まずは、、ああまだ置いてあった。限定香調、『フュムリ・テュルクFumerie　Turque』、"トルコの煙"。
この文字が記されたボトルの中に広がる、底知れない、壮麗な幻覚のような景色に出会ってしまい、当たり前の日常風景が瞬時に目の前から消え失せる。

【煙と蜜の混ざり合った甘い香り。バルカンタバコ、レザー、蜂蜜、ジンジャー、エジプトジャスミン、トルコローズ】

～オスマントルコ、まばゆい贅沢の中に閉ざされた宮廷。美しい女官たちが歌、詩、踊りを競っている。芸術と快楽の中に生きる人々は、繊細に装飾された長いパイプでゆっくりと煙草をくゆらす。蜂蜜、スパイス、時には媚薬を混ぜて・・・。～

・・・こんな幻想的なキャプションにやられてしまった単純な自分もおりますが、
煙の香ばしさがせつなく引き立てられる、この深み。
官能を誘うことこそが香りを身につける主な目的である、
そう優雅に囁かれる心地です。

ほかに、この日酔わせてくれたのは。

すこし名香『OPIUM』を思わせる、
『アンブル・スルタンAmbre Sultan』。
【アンバー、安息香、アンゼリカの木の根、パチュリ】

やはり限定香調、
『グリ・クレールGris Claire』。
【ラベンダー、アンバー、ドライウッド、トンカビーン、アイリス】
・・・そうね、COCO組成にもあるトンカビーンが自分のツボみたいですね。
アンバーも、いわずもがなですね。。


・・・でもこんなのばかりつけていたら、なんだかいつでも瞑想体勢の人みたいなので、部屋に薫らせるのは、
『サンタル・ブランSantal Blanc』、
【白檀、安息香、シナモン、アイリス、ムスク】
静かに高貴な白檀を。

本日、晴れて乾いたお天気が気持ち良かった。
そんな新春の一日の夜をしめくくるにふさわしい。

こんな、荘厳な幻想の旅から、緩やかに帰還するのにも。。