BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説23-9「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-13 21:52:20 | ★ディスティニー第23章
(でもあんな男と一緒にされるなんて、おぞましい…)

 諒、どうしてあんなオヤジと俺を一緒にしたんだろう…

 それにしても、純粋な諒には抱けないだろう。

 何より他の男に穢された自分なんて…

 言葉では何と言えても体は反応しないだろう。

 肌を重ねることなんて…

 ベッドの中で諒の、自分をいたわるような優しい笑顔も、しっかりと抱きしめてくれるあの長い腕も麻也には懐かしかった。

(俺は諒に守られているのは本当に好きだったんだ…)

 それなしで自分は正気でいられるのだろうか。

 諒が他に恋人を作ったらと想像するだけで気がおかしくなりそうだった。

 次に何かに押さえ込まれるのにびっくりして目が覚めた。
 
 次の瞬間、視界に鋭い大きな瞳が見えたと思ったら唇を貪られていた。

 そして無意識に自分の唇と舌はそれに応えていた。

 諒だった。
 
「麻也さん、本当にごめんなさい。嫌な思いをさせて…」

★BLロック王子小説23-8「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-12 21:33:12 | ★ディスティニー第23章
 真樹が、続けて両親に説明してくれる。
 
「…症状はもう大丈夫なんだけど、仕事疲れがひど過ぎて、静養のためにいるの。あとマスコミ対策に」
 
 その時携帯が鳴る音が…
 
 音が聞こえるのはサイドテーブルからで、まだ諒の携帯が置いてあってそれに着信しているのだ。
 
 疲れている麻也は鈴木に渡されるままその電話に出た。
 
ー麻也さん…
 
 諒だった。
 
 麻也は声が出なかった。
 
 電話の向こうの諒の困っているのも伝わってくる。
 
ー麻也さん、全部俺が悪かった。恭一さんから聞いてわかった。俺が変に勘違いしていたよ。本当に申し訳ない。
でもやっぱり俺は麻也さんを愛してる。
やり直したい…

 麻也は無言で電話を切ると、唇をかみしめて鈴木にその携帯を渡した。
 
「その携帯、諒に返してください お互いに迷惑なんで」

 迷惑なんて…
 
 鈴木がそう言ってくれたのと、諒の言葉は、実は麻也には本当に嬉しかった。

 でも真実を知る前の、真実を知らなかったとはいえあの諒の暴言、怒りの表情、あの時突き刺さった恐怖は、どうやったら自分の記憶から消えてくれるのだろうとも、麻也は思った。

★BLロック王子小説23-7「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-11 21:06:24 | ★ディスティニー第23章
次に麻也が目を覚ました時は、さらに申し訳ないぐらいに疲れた様子の真樹が、
 
「兄貴ごめん何から話せば…」
 
いつしか横にいた、これまた疲れた表情の鈴木が、
 
「新聞に自殺未遂か?とか出てしまったんです。これからご両親がいらっしゃるのに…」
 
「親父とお袋には、兄貴は疲れていて、薬を飲み間違えて入院したって説明したのに…」
 父も母もその記事を読んでしまって、空港で倒れそうになり、周りの人に助けてもらったのだという。
 
 その時真樹の携帯が鳴った。
「親父だ…」

真樹は仕方なくといった様子で出たがすぐに、

「うん、大丈夫。兄貴と替わるね」

麻也は仕方なく携帯を受け取ったが、
何と言っていいものかわからず…
 
「おい麻也か麻也…」

「父さんごめん…」
 
「お前は何をやってるんだ。今羽田に着いたからすぐそっち行くから」
 
「お兄ちゃん、お兄ちゃん…」
 
電話をひったくって割り込んだ母は半狂乱だった。
 
「母さん、ごめん」
 
「お兄ちゃん大丈夫なの? 自殺なんて嘘よね?」
 
大泣きされた。

「間違って薬を飲んで運ばれただけだから」
そう言うのがやっとだった。
 
麻也は頭の片隅で思った。
 
諒はこのことをどう思っているんだろう…
 
「うんまだ病院で寝てるから…」
 
そこまでが限界で、麻也は真樹に携帯を返してしまった。

★BLロック王子小説23-6「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-09 20:09:24 | ★ディスティニー第23章
麻也にもまた涙があふれてくる。

「だって俺はあんなことがあった…それを知ってしまったらいくら諒だって…」

麻也は絶望的な気持ちで続けてしまった。

「俺に指一本だって触れられるわけはないんだ…」

 すると恭一は、どうしてか手に持っていたメンバーお揃いの携帯を渡してきた。

 ボディーはメンバー共通だが、ストラップはシルバーの羽モチーフ。

 それはまぎれもなく諒のものだった。

 それを恭一は麻也の手に握らせてきたのだ。

「麻也の部屋に行くから何か貸せって言ったら、慌てて救急車に乗ったからこれか服しかない、っていうから借りてきた」

「諒に返して。絶対本気で渡してないよこれ
それに俺が触ったら汚れちゃうよ」
 
 麻也はとっさに恭一に携帯を返そうとしたが受け取ってもらえなかった。
 
「いや今日は絶対パニクっただけだって。今頃後悔しているよ」
 
「そんなことないよ」
 
「いやそんなことあるよ、恭一…」
 
そう言ったところで看護師が入ってきて、また麻也の意識は落ちた…

★BLロック王子小説23-5「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-06 15:24:00 | ★ディスティニー第23章
 しかし、恭一は怒りを押し殺したような表情で歩み寄ってくると、でもこらえきれなくなったように大声で叫んだ。

「麻也! どうしようもない時はせめて逃げろよ! 俺んとこでもどこでもさ! いなくなるのだけはさあ、やめてくれよ…」

「恭一、ごめん…」

 見れば恭一の目は真っ赤になっている。

 麻也も…涙がこらえきれない。
 
 真樹がそっと部屋を出て行ってくれて、二人きりになった。
  
 恭一は大きなため息をつきながらベッドの脇に椅子に腰掛けると

「俺は俺の一存であの麻也の事故のこと諒くんに話したよ」

「…」

「お前に絶交とかされてもいいと思った。

ただ、諒くんに誤解されたまま、
麻也が諒くんを失うなんて絶対嫌だった」

「でもあれは…」
 
 麻也はベッドの上で唇を噛み締めるばかりだった。

「でも、諒君はわかったって言ってくれた。麻也が言ってた辛いことはそれだったなら…」

そこで恭一は涙をこぼした。

「…ちゃんと確かめて、本当に大事にしてあげればよかったって。許されるなら…」

恭一はそこで早口になった。

「やり直したいって。今度は麻也さんのトラウマに触れないように優しくしたいって…」

「嘘だ」

「なんで」

「諒は責任感が強いから責任を取りたいっていうだけだよ」