BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説22-15「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-04-09 21:30:19 | ★ディスティニー22章
 諒はしぼり出すように、
 「…麻也さんは今度は薬で…」
 すると社長は諒の腕を叩き、
「麻也は絶対大丈夫だよ。病院の薬しか持っていないんだから。何より麻也はお前を失うより死んだ方がましだと思ったんだ。2人ともお互いに愛情があるまま、一緒におかしくなってたんだよ」
 しかし諒は、
「そんなの分からない。麻也さんは人気とかバンドとかを失うのが怖かっただけかも…」               
 でも、そう言いながらも諒は最後に見た麻也の笑顔と言葉を信じたかった。
 やっぱり麻也は本当に自分に救いを求めていたのではないだろうか。
 そして自分だけを愛してくれていたのではないだろうか。
 それを自分はどうして信じられなかったのか…諒は自責の念に駆られるばかりだった。
 その後、麻也のことは何も知らされぬまま諒は個室に移されると、疲れの限界をとっくに越えていた諒はベッドの上で意識を失って…
 目が覚めると社長がいてくれた。
 そこに須藤がやってきて、ようやく諒は麻也の容態を聞くことができた。
 麻也の意識が戻って記憶障害はなかったこと、命に別状は無かったこと…
 諒は必死で頼んだ。
「麻也さんに会わせて!」
「いや、面会謝絶なのでまだだめです。一生人工透析になる人もいるようなんですが、そんなこともなくて、でも麻也さんの精神的なショックが大きいので、真樹さんは付きっきりだし…
「諒、お前もこんな状態だから会うのは無理だよ」
「でも、でも俺は麻也さんに会いたい。会って謝りたい」
「もう少し落ち着いてからにしてください」
「でも須藤さんは会ったんでしょ」
「私も会ってません、本当に家族だけなんで連絡は真樹さんに頼んできました。ご両親は出張中でこちらに向かってる最中だそうで…」
 じゃあ、せめて真樹に…と言いかけて、諒は自分にその資格があるのかと気付き、言葉を飲み込んだ。

★BLロック王子小説22-14「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-04-04 21:48:49 | ★ディスティニー22章
「それで、麻也さんは…」
 麻也がベランダから飛び降りようとしたこと、その後に薬をシャンパンで流し込んだことを
諒は社長に話さないわけにはいかなかった。
「…俺、麻也さんが追い詰められているのに…こんな飛び降りなんて狂言やったって信じられないって言ったんです」
「諒…」
 社長がどうしたものか困っていると、さっきの看護師が様子を見にやってきた。
 すると諒は噛みつくように、
「あの、遠藤麻也は、麻也の容体は?!」
「大丈夫ですよ。後から先生から説明がありますから」
「大丈夫ってどういう大丈夫なんですか?」
「症状が軽そうだということですよ…もう少し休んでいて下さいね」
 看護師が出ていってもまだ諒の話は続く。
「俺が狂言なんて言ったから…」

★BLロック王子小説22-13「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-04-03 21:02:44 | ★ディスティニー22章
「麻也さん、諒 今、救急車呼ぶから待ってて!」
 すると麻也は微笑を浮かべ、
「… 諒…大好きだ…」
 と言うなり、麻也は目を閉じ、がっくりと首を落とした。
「麻也さん、麻也さん!」
 そこで諒は取り落とした自分の携帯から社長の声が聞こえることに気づいた。
 慌ててそれを取り上げたが、
ーどうした? 何があったんだ?
 諒は言葉が出ない。やっと、 
「麻也さんが、麻也さんが…」
ーケガか? 何だ? 
「薬あおってシャンパン飲んで倒れてる…」
ー何だって? 
「今俺達も行くから。いいから早く救急車呼べ!」
社長の電話を切って救急車を呼んでから到着までが諒にはあまりにも長く感じられた   
 麻也には何度も呼びかけたが、麻也の目は開くことはない。かろうじて弱々しい呼吸はあるが 、救急隊員の呼びかけにも麻也は反応しなかった。
 混乱しながらも諒はどうにか、「口論の末に」麻也がベランダから飛び降りようとしたこと、その後に薬をあおったことを説明した。
 救急車の中でも、病院に着いても、集中治療室に向かう途中の呼びかけにも麻也は反応しなかった。
 看護婦に名前を呼び続けちれながら遠ざかっていく麻也のストレッチャー。
 救急隊員が拾った薬袋から2種類の薬をシャンパンであおったということが特定できそうだということだったが、集中治療室の前に諒は力なく立ち尽くすだけだった。
 そこに誰かが走りこんでくる音がして諒は振り返った、真樹と須藤と社長だった。
「兄貴は兄貴はどこ?!」
 諒は必死で叫んだ。
「ここ! 集中治療室!」
 そこに看護師が飛び出してきた。
「どなたかご家族の方いらっしゃいませんか?」
 みんな真っ青になったが、
「俺、弟です」
 と真樹が看護師の後を付いて行く。諒もついていこうとしたが、お友達はダメなんですと制止された。
 お友達…諒はショックを受けたが、須藤や社長のこの事件のショックも相当なもので、なぜこうなったのか諒に問い詰めるが、諒もどう説明したものか混乱し、頭を抱えたままふらつき倒れこんだ。
 大丈夫ですか、と通りかかった看護師が駆け寄ってくる。
 そして須藤と社長に抱えられて看護師に案内されるまま、諒はこじんまりした部屋に通されそこのベッドに横たえられた。
 須藤は真樹の方に行ってみると、部屋を出ていった。
 少し落ち着いたらしい社長が、
「諒、よっぽどのことがあったんだろう、わかることから話してくれないか?」
 諒は思わず言葉につまった。しかし、どうにか、
「俺が、俺が全部悪いんです! 俺、キレて思ってもいないことや悪口とか、みんな麻也さんにぶつけちゃったし…」
 社長たちは呆然とするばかりだった。
「何でだよ、そりゃお前たち最近すれ違ってても仲がいいんじゃなかったのか?」
 諒は叫んだ。
「憎かった。あのアイドルも、あの小僧も、元カレもまだ繋がってると思うと…」


★BLロック王子小説22-12「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-03-25 22:01:34 | ★ディスティニー22章
 長く話しているうちに電話の向こうの社長は少し落ち着いてきたらしく、
ーつまり、なんだかんだ言っても誰もお前たちを引き離せなかったわけだ。
(そんな…麻也さん…)
 諒は自分の行動を悔いるばかりだった。
ーでもお前たち2人は、やっぱり人の一生狂わすくらい、すごいってことだな…それなのに、守りきれなくて、すまなかった…
ーそして、今度から俺も仕事は選ぶよ、若いやつにも麻也は毒だ。
 本当に長い電話になっていたようだが…
 その時、リビングで大きな音がした。
 何かが倒れたような。
 嫌な予感がして諒は携帯を切るのも忘れ、握りしめたまま急いでリビングに戻った。
 リビング? なぜ?
 ドアを開けると諒の目に飛び込んできたものは飛び散った白い錠剤、そして倒れこんでいる麻也…
(なぜ麻也さんがここに…?)
 シャンパンの瓶もグラスも絨毯の上に倒れていた。
 あわてて諒は麻也の脇にしゃがみこんだ。
リアリティーがない。
  と、次の瞬間諒は我に返り、叫びながら麻也の体を抱きかかえて揺さぶった
「麻也さん! 麻也さん!」
 麻也は目を開けてくれない。
「麻也さんしっかりして!」
その時だるそうに麻也は目を開けた。

★BLロック王子小説22-11「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-03-22 11:51:17 | ★ディスティニー22章
ー親父さんも、自分も業界の人間だから男同士なんて見聞きはしていたけれど、でもまさか自分の息子がこんなことになるなんてと言ってた。
 そして、諒には耳の痛くなるようなことも…
ー…お前たちには悪いけど、親父さんには自分の息子が恋愛的に男である麻也を好きになってしまったことがかなりショックだったらしい。
「はあ…」
 だがこのとき諒はそのことの本当の意味をまだわかってはいなかった。
ーあとお前は聞きたくないだろうけど、鈴音には響子は、自分が19歳で今の旦那を前の妻から奪ったことを話して、その気にさせていたらしい。麻也があまりにも素っ気ないのでそんなことまで言って焚き付け続けたらしいんだ。
 諒はようやく、頭の中が「普通のパニック」程度になってきていた。
 社長が言うには鈴音の事務所の方はそんな鈴音の暴走を最初は止めていたけれど、新人としても期待ほど売れてないので、売名にでもなれば、と響子がついているのをいいことに黙認どころか最近では積極的に手伝っていたらしい。
ーそれがあの雑誌の写真だよ。ホテルの廊下での。
 そして、諒は、社長の何げない言葉にはっきり傷つくことになる。
ーあの女性、そこまでしてお前たちを引き裂きたかったんだな…
(それは俺が響子を…無碍にしなければ…ってこと?)
 動揺しながらももっと強く知りたいことに諒は気づく。
 あのオヤジ…鈴音の社長の坂口と麻也は…しかし尋ねる勇気が出ない。すると社長はそれを察したらしく、
ー坂口のオヤジほどの強欲なドンが黙認だったっていうのは、個人的にそれを望んでいたってことだろう、って、藤田さんは。
 そして、
ー俺が思うには、あのドンとやらはきっと何としても麻也のことを手に入れたかったんだろう。つまりそれは、麻也はあの男のものじゃなかったってことだ。
「…」 
 諒は携帯を握ったまま愕然としてしまった。
それが伝わったのだろう。気の毒に思ったのか社長は、
ーあと、藤田さんがこっそり教えてくれたけど、あの響子という人は病気ということにして、今の仕事を全部降板させてそのまま女優をフェードアウトにするんだって。
「え…?」
ー旦那の関村氏は大御所の脚本家だ。藤田さんへの詫びの意味もあるんだろう。女房に顔に泥を塗られた形で…混乱してるそうだけど離婚の話もあるって言うから彼女は全てを失うんだろう…夫がいながらお前に勝手に本気になったんだから、離婚されても不思議はないよな。でも彼女を増長させた自分にも責任があるからって悩んでるらしい…
 あまりのことに諒は驚き、しかし、これまでの不満を社長には知って欲しかったせいかか、つい口走ってしまった。
「俺なんて人工授精に協力してくれって言われましたよ。旦那さんからも。いくら若い奥さんが可愛いからってわがまま聞きすぎだったと思いますよ。こっちは大迷惑ですよ」
ーえっ? それ本当だったのか?
社長はびっくりしていたが、
(知ってたなら守ってくれよ…)
諒はがっかりしてしまった。