「それで麻也さんとはまだ続いてるとかなんとか言うし、薬なんか使っているとも言うし…」
「何だよ諒、兄貴のこと疑ってるの? それに何だよ薬って!」
あー、やっぱり言わなきゃダメか…
「…合法だって言いながら、ジジイはそれに頼らないと君のような若者のようなわけにはいかないんだ、とかさ」
真樹は真っ青になった。
「あのさあ、ソイツって本物のローベル企画の坂口社長なの?」
「だって須藤さん挨拶してたよ」
「でもいくら何でもそれ以外はウソだろ。兄貴と諒が、ってか俺たちが気に入らなくて潰したいんだろ。俺たちは、社長と対立してるあちらの専務派とのお付き合いだし」
考え過ぎじゃないの、と真樹が不審げな表情だったことが諒には救いだった。
「何で兄貴が好きでもないのにそんな奴と付き合わなきゃいけないんだよ」
兄の名誉ということもあるのだろう。真樹は大声で反論するが、諒の気持ちは収まらない。
「例えば脅されてるとか」
「脅し?」
兄が脅しに屈するとは真樹に思えないようだった。
しかし諒は絶望的な気持ちで言った。
「でも俺達3人が人質にされてるとしたら?」
「どういうことだよ、人質って」
「うーん、やっぱ俺たちを潰す感じ?」
「どういう事務所だよ。公私混同ひどくない?」
でも…諒の前でだけ落ち着かなかったあの男。
あの表情は、少なくとも芸能界のドンの顔ではなかった。麻也に執着している少年の顔…
すると真樹も言いにくそうに困ったことを言い出した。
「でも兄貴には浮気するような時間はなかっただろ? それにその…諒は一緒にいて何も気がつかなかったんだろ」
真樹の頬が赤らんでいるのを見て、諒もあまりに恥ずかしくて諒子を持ってくるしかなかった。
「その頃は忙しかったから、さすがの諒子ちゃんも待ち切れなくて寝ちゃってたんだよね」
「…諒子ちゃんもか…」
真樹の声が痛かった。
その前後は他にも浮気問題があったことを諒は思い出したが…