諒は麻也を無理やりバルコニーの手すり壁から引きはがそうとするが、バランスが崩れそうで怖い。
それをどうにか引きはがした時、諒も一緒に倒れ込んでしまった。
「何やってんだよ! 全部バレたら逃亡かよ! 死んだら何やっても許されると思ってんのかよ!」
ショックのあまり諒も悪態をついてしまった。
しかしここは五階である。 麻也もショックのせいか涙が止まらないようだった。
「 諒、信じて…信じてくれるだけでいいんだ…」
「だから、もうどうやったって無駄さ、信じられねえよ、こんな狂言やったって」
とっさに出た「狂言」、という言葉に諒自身も驚き、麻也の体がビクッと反応したのも感じて後悔した。
しかし、それから何と言っていいかわからず、 それでも仲間への最後の温情とでもいったものなのか、諒は優しく肩を抱き立ち上がらせて、麻也をリビングに入れた。
でも、それでも心配だったので、窓が小さいベッドルームへと肩を貸して連れていった。麻也の体は小刻みに震えていた。
(何か鎮静剤のようなものでもあれば…)
それで麻也をベッドに座らせると諒は、
「睡眠導入剤まだあるって言ってたよね? それでものんで少し休みなよ」