BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-46「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-19 21:28:21 | ★ディスティニー21章
 確かに諒は必要以上に疲れている。自分が病気でなければホテルでは癒してあげるのに…
「どうしたの?」
 諒だった。真樹がきちんと、
「兄貴に頼んでたの。みんな諒を休ませたいから、兄貴は俺と泊まるようにしてくれって。」
「…」
「兄貴の身の回りは俺たちがやるから、ツアーのラストまで、とにかくボーカルに専念してほしい。」
 諒はどこかホッとした表情を押し殺したように見えたが、
「ま、麻也さんはそれでいいの? 」
「うん。ライブでは絡めるし、それで足りなかったら打ち上げの時に路チューでも…」
路チュー、に落としどころを見つけて、平和的に男三人はバスに乗り込んでいった…
 しかし、その地区のライブはいまひとつだった。真面目すぎるほど真面目な県民性のためもあるのか、それとも、まだまだディスグラに染まり切っていないのか・・・
 後で打ち上げで、「諒のバースデーサプライズを期待していたファンがかなりいたらしい」というのを色々な人に聞いて、
メンバーたちもちょっと困ってしまった。
「…それでアンコール後もいまいちだったのか…」
 その時、真樹がもぞもぞと自分のバッグに手を突っ込み、携帯を取り出したが、
「兄貴の方。石川さん」
 専属のカメラマンが、いくら世話になっているとはいえ、こんな時間に…とも思ったが、宴席に座っているのもそろそろ疲れてきたので、麻也は切れてしまった電話を折り返す体で、真樹に付き添われて店の外の廊下に出た。
 しかし、どうしたものか何度かけなおしても石川は出ない。
 そのうち、
「…バッテリー切れたあ…」
「兄貴ぃ…じゃあ、ホテル帰ってからにでもすれば」
「遅くなるからやだ。真樹のケータイ貸して。」
「置いてきちゃったよー。ちょっと待ってて。」
と、真樹はわざわざ店に取りにいってくれた。
 その時に…麻也は信じられない人物を見てしまった。
 マネージャーに付き添われた少年、藤田冬弥。麻也に熱烈な片思いをぶつけてくる18歳。
 隣の店に入っていったらしい。
 麻也は慌てて廊下の曲がり角に身を隠した。
 が、ニアミスで真樹とマネージャーがすれ違い、冬弥ではなく彼は真樹に気づいたかも…
麻也は慌てて真樹に向かって走り、
「真樹、一緒に逃げて!」
「えっ? 何、どうしたの? 」
「いいから! ホテルに戻る!」
「わかった!」
 ビルから飛び出すと、追っかけの洗礼だった。
 キャー、お兄ちゃん~!!
きゃー、真樹ぃ~!!
 遠藤兄弟最高ーっ!!
 雑居ビルの前にたまっていた追っかけを真樹がかきわけてくれて、二人はようやくタクシーに乗り込むことができた。

★BLロック王子小説21-45「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-18 22:32:28 | ★ディスティニー21章
「…諒、何言ってるの?」
「いや、辞めるじゃなくて、まずは休むでもいいけどさ…」
 諒はもっとも大事なものを差し出してきている…そう思った途端、あろうことか麻也は少し喜びのようなものを感じ、怒りが少しおさまってきたような…
 諒になだめられるまま、掛け布団の上で諒に体を持たせかけていると、障子の向こうから社長が声をかけてきた。
「…おーい、大丈夫かー?」
 諒が明るい声で、
「大丈夫です。うるさくしてすみません」
社長は少しからかった口調で、
「あんまり頑張るなよ
。ユンケルでも持ってこようか?」
「いえ、大丈夫です~」
「すみません」
 麻也も謝った。
「じゃあ、おやすみ。明日よろしくな~」
 社長のおかげで2人に少し笑いが戻った。
(…とにかくあと3ステージ頑張れば、武道館2days…って全部で5つか…頑張ろう…)
 
次の日は社長の家族に見送られて、地方公演に出発した。
「何だか修学旅行みたい~」
諒の笑顔に麻也も引き込まれて笑っていた。
その続きで、空港でも何だか二人はベタベタしてしまい、遠巻きにいる追っかけたちのほっとしたような、あるいはびっくりしたような視線を感じる。
あの雑誌の写真も記事も、あのアイドルが匂わせた結婚相手もすべて嘘だったのだと…

…このまま、ツアー最終日の武道館までいけるものだと思った。麻也と諒、バックステージの恋人たちは。

しかし…

空港でリムジンバスを待っている間、麻也は真樹に耳打ちされてしまった。
「…兄貴、この3公演は俺の部屋に泊まってほしいんだけど…」
「どうして? 」
「兄貴には悪いけど、諒を休ませたい。俺しか言える人間がいないと思って…」
兄貴といると、諒、ホテルの部屋で頑張っちゃうだろ…
今日の真樹はずいぶんストレートだ…麻也は頬が赤らむのを感じながら反論した。
「…いや最近はそうでも…」
すると真樹はふくれっ面で、
「いや、そうじゃなくて、着替えの手伝いとか荷物の整理とか…」
「あ、ああ、そっちね…」

★BLロック王子小説21-44「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-17 22:13:54 | ★ディスティニー21章
 麻也は諒の腕を振りほどき、
「そばにいたいとかいてくれるだけでいいって、何? いるだけじゃダメなんだろう?
お前の横でニコニコしてギター弾いてるだけじゃダメなんだろう?
ミリオン出せなきゃただのクズなんだろう?」 
「麻也さん、何言ってるの? そんなことないって! そんな話じゃないよ!」
 諒が落ち着かせようと、腕を押さえてくるのも麻也には腹立たしかった。それで、何か叫ばずにはいられなかった。
「諒は自分の曲がミリオンいったから、そんなことが言えるんだよ
!」
 諒はその苛立ちに優しく寄り添うように、
「麻也さん、そんなに言うなら次でミリオン狙えばいいじゃん…」
 麻也は諒の手を 
「もういいよその話は。ほら、抱けよ。こんなクズとでも諒はヤりたいんだろ」
「麻也さんはクズなんかじゃない、そして俺はヤりたいんじゃない。大切な人と愛し合いたいんだ」
 諒は悲しそうな笑みを浮かべ、
「俺はただ綺麗すぎるのに無邪気な可愛い人に一目惚れしただけ。麻也さんは仕事と自分の存在意義を重ねすぎじゃないかと思うけど
。プライベートで2人きりの時は、その頭を少し休めようよ」
 麻也はまたカチンと
きて叫んでいた。
「プライベート? そんなの俺たちにはないじゃん! 二人で顔合わせてると、オンもオフもない。お前もファンも同じことを言うじゃん? 持ち上げ方が同じ。俺はお姫様なんかじゃない、天使でもない、妖精でもない王子でもない、ただの生身の男だよ」
「それは俺が一番わかってるよ」
 …麻也は叫び過ぎてエネルギーが急になくなっていくのを感じていた。気づいた諒が優しく座らせてくれて、
「だから麻也さんがいてくれるだけで俺はいいんだ」
「…」
「…じゃあ、麻也さん、2人でディスグラ辞めようか」

★BLロック王子小説21-43「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-16 22:05:18 | ★ディスティニー21章
「でも俺たち2コしか違わないんだよ」
「あっ、それは大丈夫…」
 そう言いかけた諒は、まずいことを思い出したように一瞬口をつぐんだが、
「とにかく俺はこんなロマンもへったくれもないプロポーズになっちゃって、でも正式、みたいなカタチだと、麻也さんほっとするでしょ?」
 麻也は本当に困ってしまった。諒のことはを失いたくない。でも…でも…
「諒、ごめん、今、俺は病気みたいな状態だから、大事なことは決められないよ」
「麻也さん…」
 諒の焦る様子に、うまくいった、と麻也は思った。そして、
「結婚は駆け落ちして籍入れてしまえば当人の問題で済むけど、養子とか何とかって、俺わかんないことだらけで判断できないよ」
「…」
「たとえばオレ、また勘当されるのはいいとして、諒の名字を名乗れるの?」
「うーん」
 言ってから麻也も無理だと気付いた。麻也がは年上なのだから、諒が麻也の名字になるのだろう。
「それに、俺の家は真樹が継げばいいけど、諒は一人っ子だし、何より大翔くんはどうするの?」
「そりゃそうだけど、俺は本当に本気だってこと、もういっぺんここらでわかってほしかったの」
 何で、と麻也はむっとしてしまった。
「だから、麻也さんもね、もう俺をハラハラさせないで。お願い」
「でも、俺だって好きであんなことになったんじゃないよっ!」
 思わず麻也は叫んでいた。
 その剣幕には麻也自身も驚いたが、諒の方が真っ青になる。
 麻也さんごめん、と抱きしめてきたが、麻也は言葉が止まらなくなった…

★BLロック王子小説21-42「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-15 21:50:39 | ★ディスティニー21章
 麻也は食事をすませていたので、借りている2階の部屋に上がってしまった。
 しかし、また社長に、二組の布団が敷いてある部屋に移されてしまった。
 すると驚く速さで食事を済ませたらしく、諒は移動用のバッグを持ってすぐ二階に上がってきた。
 ひと足早く麻也は布団に入った。その横にぴったりとくっついてもう一組布団が敷かれていたが、麻也はもうそれを離す気力はなかった。
 諒は部屋に入ってくるとバッグを畳の上に置いて、困ったような表情でどうにか
「麻也さん、来週ラストスパート俺も頑張るからよろしくね」
「うん」
「それでね、麻也さん俺色々考えたんだけど俺はやっぱり麻也さんが好きなの。ずっとそばにいたいの。オフに麻也さんに南の島に連れてってもらうでしょ。でも、その後もこれまで通りずっと一緒にいたいんだよ。麻也さんなしではいられないの。,あとは麻也さんのジャッジに任せるよ」
 麻也はしばらく考え込んでしまった。
「…俺だって同じ気持ちだよ」
「じゃあ、どうしてあの女の子と結婚しなくちゃいけないの? 脅されてるの?」
 麻也は少しほっとしている自分に驚く。
 (諒はまだ肝心のあのことを知らないんだ…よかった…でもやっぱりいつもの繰り返しだ…)
「いや、これは本当に無実で何もないよ」
 諒はほっとした表情を浮かべたが、
「なら、どうして俺と別れたいの?」
「あ…」
「じゃあ、麻也さん、俺、麻也さんと結婚する、それならいいでしょ?」
 拒否しなければ…諒の幸せのためには…
「いや、そんなの無理だろ、男同士じゃ…」
「男同士だってやり方はあるでしょ。俺、聞いたことあるもん。養子縁組とかさ、そのうちちゃんとした制度ができるかもしれないし…」
 諒は訴えるのをやめてはくれない。
「無理だよ。そんなこと」
 麻也は冷たく突き放してみた。
 何だよ、麻也さん。無理だ、無理だばっかり…俺はお互いをお互いだけのものにすれば今回みたいなことがなくなるから…」
 そこで少し声が小さくなった諒が気の毒だった。
「…名字を同じにしたいんだよ一番他人にもわかりやすいじゃん…」