BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説23-10「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-14 22:02:48 | ★ディスティニー第23章
「麻也さん、本当にごめん。何て言ったらわからないけど…俺は麻也さんなしではいられない。でも、もし許してもらえなくても一生麻也さんに償い続けるよ…」

 夢なのか何なのか麻也には分からない。
 
 しかし麻也はまた無意識にその手を握り返しさらにはしっかりと握っていた。
 しかし、意識がはっきりしてくると麻也はこの現実に驚愕してしまった
 
 諒が自分にしっかりと触れている。
 
 麻也が何も言えずにいると、

「麻也さんごめん」

 諒にも言葉はない。
 こんなはずではなかった
 不意をつかれた混乱で麻也もいい言葉が思いつかなかった。

しかし緊張した様子で
謝罪しようとした諒は 真っ赤になっていてそれを見ていた麻也も涙を必死で堪えたつもりだったが、
 麻也は止めた。
 

 それでも麻也が何も言わないので、でもしばらく次の言葉を待っていた諒は、今にも泣き出しそうな表情でまた麻也のベッドの脇にしゃがむとしっかりと麻也の手を握ってくる。

(諒のこと、失いたくない、でも…)

 すると諒は決心したように、
 
「聞いたよ、恭一さんから全部聞いた。本当に俺が悪かった。申し訳ありません…」
 
 つらかったが、麻也も言うしかなかった。
 
「諒、恭一から聞いたんだろ? 俺そういうヤツなんだよ。そういう過去があるんだよ。
ピュアなお前、真面目なお前には俺はふさわしくないんだよ」

 すると諒は唇を噛み締めて、
「いや、恭一さんはそんな言い方じゃなかった。
麻也さんに横恋慕した男がいて、そいつは何もかも悪かったって。
それなのに俺はあんなひどいことを…」

 麻也さん本当にごめん。
 俺麻也さんの傷をもっと聞いてきちんと癒してあげればよかった…
 
 そこで諒はとうとう声を詰まらせた。

「麻也さんこそもしかして本当は俺とその夜を過ごすのがすごく苦痛だったんじゃない?」
 
 その言葉に麻也は申し訳なさでいっぱいになった。
 
「俺の方こそひどいこと考えてたよ」
「え? どういうこと?」
続けるべきか麻也は迷った。
「その、清められてるって…諒に清めてもらってるって…好きなやつに…」
 すると諒は意外なことを言った。
「それは違う。麻也さんを汚すことは誰にもできなかったんだから。麻也さんのどこも、誰にも汚すことはできなかったって、恭一さんは断言していたし、俺もそう思う」

 そこまで一気に言うと諒はため息をつき、
「それを信じられなかったのはやっぱり俺が俺自身を信じていなかったということだと思う。
自分が麻也さんにふさわしいって思えなかったからだと」

★BLロック王子小説23-9「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-13 21:52:20 | ★ディスティニー第23章
(でもあんな男と一緒にされるなんて、おぞましい…)

 諒、どうしてあんなオヤジと俺を一緒にしたんだろう…

 それにしても、純粋な諒には抱けないだろう。

 何より他の男に穢された自分なんて…

 言葉では何と言えても体は反応しないだろう。

 肌を重ねることなんて…

 ベッドの中で諒の、自分をいたわるような優しい笑顔も、しっかりと抱きしめてくれるあの長い腕も麻也には懐かしかった。

(俺は諒に守られているのは本当に好きだったんだ…)

 それなしで自分は正気でいられるのだろうか。

 諒が他に恋人を作ったらと想像するだけで気がおかしくなりそうだった。

 次に何かに押さえ込まれるのにびっくりして目が覚めた。
 
 次の瞬間、視界に鋭い大きな瞳が見えたと思ったら唇を貪られていた。

 そして無意識に自分の唇と舌はそれに応えていた。

 諒だった。
 
「麻也さん、本当にごめんなさい。嫌な思いをさせて…」

★BLロック王子小説23-8「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-12 21:33:12 | ★ディスティニー第23章
 真樹が、続けて両親に説明してくれる。
 
「…症状はもう大丈夫なんだけど、仕事疲れがひど過ぎて、静養のためにいるの。あとマスコミ対策に」
 
 その時携帯が鳴る音が…
 
 音が聞こえるのはサイドテーブルからで、まだ諒の携帯が置いてあってそれに着信しているのだ。
 
 疲れている麻也は鈴木に渡されるままその電話に出た。
 
ー麻也さん…
 
 諒だった。
 
 麻也は声が出なかった。
 
 電話の向こうの諒の困っているのも伝わってくる。
 
ー麻也さん、全部俺が悪かった。恭一さんから聞いてわかった。俺が変に勘違いしていたよ。本当に申し訳ない。
でもやっぱり俺は麻也さんを愛してる。
やり直したい…

 麻也は無言で電話を切ると、唇をかみしめて鈴木にその携帯を渡した。
 
「その携帯、諒に返してください お互いに迷惑なんで」

 迷惑なんて…
 
 鈴木がそう言ってくれたのと、諒の言葉は、実は麻也には本当に嬉しかった。

 でも真実を知る前の、真実を知らなかったとはいえあの諒の暴言、怒りの表情、あの時突き刺さった恐怖は、どうやったら自分の記憶から消えてくれるのだろうとも、麻也は思った。

★BLロック王子小説23-7「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-11 21:06:24 | ★ディスティニー第23章
次に麻也が目を覚ました時は、さらに申し訳ないぐらいに疲れた様子の真樹が、
 
「兄貴ごめん何から話せば…」
 
いつしか横にいた、これまた疲れた表情の鈴木が、
 
「新聞に自殺未遂か?とか出てしまったんです。これからご両親がいらっしゃるのに…」
 
「親父とお袋には、兄貴は疲れていて、薬を飲み間違えて入院したって説明したのに…」
 父も母もその記事を読んでしまって、空港で倒れそうになり、周りの人に助けてもらったのだという。
 
 その時真樹の携帯が鳴った。
「親父だ…」

真樹は仕方なくといった様子で出たがすぐに、

「うん、大丈夫。兄貴と替わるね」

麻也は仕方なく携帯を受け取ったが、
何と言っていいものかわからず…
 
「おい麻也か麻也…」

「父さんごめん…」
 
「お前は何をやってるんだ。今羽田に着いたからすぐそっち行くから」
 
「お兄ちゃん、お兄ちゃん…」
 
電話をひったくって割り込んだ母は半狂乱だった。
 
「母さん、ごめん」
 
「お兄ちゃん大丈夫なの? 自殺なんて嘘よね?」
 
大泣きされた。

「間違って薬を飲んで運ばれただけだから」
そう言うのがやっとだった。
 
麻也は頭の片隅で思った。
 
諒はこのことをどう思っているんだろう…
 
「うんまだ病院で寝てるから…」
 
そこまでが限界で、麻也は真樹に携帯を返してしまった。

★BLロック王子小説23-6「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-07-09 20:09:24 | ★ディスティニー第23章
麻也にもまた涙があふれてくる。

「だって俺はあんなことがあった…それを知ってしまったらいくら諒だって…」

麻也は絶望的な気持ちで続けてしまった。

「俺に指一本だって触れられるわけはないんだ…」

 すると恭一は、どうしてか手に持っていたメンバーお揃いの携帯を渡してきた。

 ボディーはメンバー共通だが、ストラップはシルバーの羽モチーフ。

 それはまぎれもなく諒のものだった。

 それを恭一は麻也の手に握らせてきたのだ。

「麻也の部屋に行くから何か貸せって言ったら、慌てて救急車に乗ったからこれか服しかない、っていうから借りてきた」

「諒に返して。絶対本気で渡してないよこれ
それに俺が触ったら汚れちゃうよ」
 
 麻也はとっさに恭一に携帯を返そうとしたが受け取ってもらえなかった。
 
「いや今日は絶対パニクっただけだって。今頃後悔しているよ」
 
「そんなことないよ」
 
「いやそんなことあるよ、恭一…」
 
そう言ったところで看護師が入ってきて、また麻也の意識は落ちた…