「麻也さん、本当にごめん。何て言ったらわからないけど…俺は麻也さんなしではいられない。でも、もし許してもらえなくても一生麻也さんに償い続けるよ…」
夢なのか何なのか麻也には分からない。
しかし麻也はまた無意識にその手を握り返しさらにはしっかりと握っていた。
しかし、意識がはっきりしてくると麻也はこの現実に驚愕してしまった
諒が自分にしっかりと触れている。
麻也が何も言えずにいると、
「麻也さんごめん」
諒にも言葉はない。
こんなはずではなかった
不意をつかれた混乱で麻也もいい言葉が思いつかなかった。
しかし緊張した様子で
謝罪しようとした諒は 真っ赤になっていてそれを見ていた麻也も涙を必死で堪えたつもりだったが、
麻也は止めた。
それでも麻也が何も言わないので、でもしばらく次の言葉を待っていた諒は、今にも泣き出しそうな表情でまた麻也のベッドの脇にしゃがむとしっかりと麻也の手を握ってくる。
(諒のこと、失いたくない、でも…)
すると諒は決心したように、
「聞いたよ、恭一さんから全部聞いた。本当に俺が悪かった。申し訳ありません…」
つらかったが、麻也も言うしかなかった。
「諒、恭一から聞いたんだろ? 俺そういうヤツなんだよ。そういう過去があるんだよ。
ピュアなお前、真面目なお前には俺はふさわしくないんだよ」
すると諒は唇を噛み締めて、
「いや、恭一さんはそんな言い方じゃなかった。
麻也さんに横恋慕した男がいて、そいつは何もかも悪かったって。
それなのに俺はあんなひどいことを…」
麻也さん本当にごめん。
俺麻也さんの傷をもっと聞いてきちんと癒してあげればよかった…
そこで諒はとうとう声を詰まらせた。
「麻也さんこそもしかして本当は俺とその夜を過ごすのがすごく苦痛だったんじゃない?」
その言葉に麻也は申し訳なさでいっぱいになった。
「俺の方こそひどいこと考えてたよ」
「え? どういうこと?」
続けるべきか麻也は迷った。
「その、清められてるって…諒に清めてもらってるって…好きなやつに…」
すると諒は意外なことを言った。
「それは違う。麻也さんを汚すことは誰にもできなかったんだから。麻也さんのどこも、誰にも汚すことはできなかったって、恭一さんは断言していたし、俺もそう思う」
そこまで一気に言うと諒はため息をつき、
「それを信じられなかったのはやっぱり俺が俺自身を信じていなかったということだと思う。
自分が麻也さんにふさわしいって思えなかったからだと」