入院して三日目に、麻也は静かな環境の病院に移ることをすすめられ、その通りにした。
追っかけもうろうろし始めていたので…
地元ではあるが、山の奥の方の病院なので、麻也を乗せた車はどんどん山を登っていく。
「俺、いつか本当に家へ帰してもらえるのかなあ?」
麻也があまりに不安そうなので、真樹と須藤と鈴木は大笑いしていた。
しかし、麻也の隣りに無理やり乗ってきた諒は無言のままだった。
到着してみると、外観からしていつもの病院よりやっぱり古い。
入院の手続きを済ませて
「麻也さん、早く部屋に入りましょう」
須藤に促されて入った部屋はまあまあだった。
疲れた麻也がベッドの上に座ると、諒は須藤に耳うちをした。
「あ、私たちはこのへんで…」
と、二人とも麻也たちに笑顔で部屋を出ていった。
(俺のせいで仕事なのかな…)
麻也は暗い気持ちになった。
それで、
「鈴木さん、俺のことその、ファンにはどう伝わってるんだろう?」
最初の病室に飛び込んできて、泣き続けた母のことを、麻也は思い出していた。
もううちにはいなくなっていい子なんていないのよ…
しかし、鈴木の答えは頼もしいものだった。
「確かにショックだったとは思いますが、万全の手を打ちましたから大丈夫です」
と、社長と真樹がいち早くテレビでお詫びをしたこと、他のメディアにもすぐに対応したことで、ファンはかなり落ち着いたということだった。
「やっぱり、弟の真樹さんが表に出てくれたのが大きかったんでしょうね」
麻也は真樹にすまなくてうつむいてしまった。
すると鈴木は励ますように、
「でも、実は、麻也さんにお願いしたいことがあるんです」
ファンクラブで号外的に今回のことをお詫びしたいので、麻也に自筆で書いてほしいというのだ。
「まだ気分がのらないようでしたら、文章を考える手伝いは僕もしますので」
麻也は頭を抱え込んだ。
「あ、まだキツいですかね。でも、せめて麻也さんの、ファンに大評判の綺麗な字を見せたいんです。王子さまらしいあの字で、順調に回復してることを伝えて…」
しかし、鈴木はまだ治りきっていない麻也に告げていなかっただけで、ファンのパニックは大変なもので、まだ続いていた。
なぜ麻也はこんなことになってしまったのか…