いつもの病院に落ち着くと、お見舞いが遅れて申し訳ない、と、直人が来てくれた。
義理堅い直人のこと、ずっと見舞いに来られなかったのは、自分のせいで仕事が立て込んでしまったのだなと想像はついたし、もしかするとツアー以来休めなくて、体調が悪いのではないかと心配もしていた。
「直人、ドームのこと本当にありがとね…忙しくさせてごめん。ちゃんと寝てる?」
「うん大丈夫だから心配しないで」
そこへ諒が、珍しく早い時間にやってきた。
「うわぁ、4人みんな揃ったー。嬉しい~」
「おう、遅くなってごめんな」
直人がそう言うと、ううん会えて良かった、と諒は笑顔で答え、すぐに麻也にロックオンして、両手を広げて近づいていった。そして病室だというのにしっかり抱きしめてキスしようとする。
「ちょっと諒、それは~」
真樹と直人がブーイングしたが、
「なんでだよ! 身内しかいないんだからいいじゃん?!」
「病人を困らせるな!」
直人が叫んだのに間に合わず、諒は軽いキスをくれた。
「ちゅっ!」
すると麻也は不満げに、
「えーっこれだけぇ~」
「兄貴ぃ!」
真樹のがっかりした声が病室に響きわたった。
気をきかせて真樹と直人は少し早めに帰り、諒は面会時間終了のぎりぎりまでいた。
「社長はね、麻也さんがここになれたらまずはここで少人数で打ち合わせしようって言ってた」
「それなら明日からでも大丈夫だよ」
「いや、それは駄目だよ」
「それは俺には荷が重いってこと? 失礼だな」
と、麻也はふざけてふくれてみせた。
麻也の元気な姿の写真と自筆のお詫びメッセージを載せた、ファンクラブの会報の号外が発送されたのはこの頃だった。
(この章終わり)(12/30*みなさまよいお年を)