BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-33「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-31 21:40:13 | ★ディスティニー21章
「麻也さん、お待たせ♪ じゃあ、鈴木さんお疲れ様です。明日もよろしく~」 
 と、送り出してから、諒が言うには鈴木はソファーの上で撃沈していたのだという。
「鈴木さんには悪いけど、麻也さんが心配だったからさ」
 麻也は諒に向かって
両手を大きく広げた。
 諒も喜んでベッドの上にあがってきて2人は久しぶりに幸せな気分に抱きしめあった。
「んー、麻也さん、明日も頑張ろうね~」
 お互い長い手脚を絡ませあって優しいキスを何度も何度も繰り返し、2人は幸せな気持ちで眠りについた。
 麻也は薬をのむ日とのまない日を、医者の指導を破って作ってしまっていて、その日のライブでは自分の体も頭も何が何だか分からなくなっていた。
 どうにかステージは立っている。体が覚えているのもあって意識が途切れても一応動けてはいる。
 諒が頼れるので、キスシーンはありがたい。
 また次の日が移動で関西方面へ…
 着いたその日がは良かったが、その次の日、またライブの後麻也は社長たちに連れ去られた。
「今度は何ですか?」
 社長、須藤、鈴木は一瞬押し黙った。
 しかし、やはりここは社長が、
「麻也、困ったことが二つ起きた。一つはあのアイドルの放送事故。もう一つは例の写真が別のもっとひどい雑誌に流れてしまって、掲載されて売られてしまった。ゴシップ誌なので、事務所の了解なんて求めてこなかったんだ」
 麻也は後者のことはわかったが、前者は何のことか分からなかった。
 鈴木が説明しようとするのを遮って須藤が、
「麻也さん、あの子には一体どんな話をしてるんですか?」

★BLロック王子小説21-32「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-30 21:44:08 | ★ディスティニー21章
 社長は心から済まなそうに、
「麻也、本当に済まなかった。お前を信じてなかったわけじゃないんだけど、お前は今病気だから、また意識のない時に誘拐されて何かあったのかと…脅されてるとかさ。じゃあ、これから出版社には抗議しておくから。本当にすまなかった」
「いえ、わかってもらえてよかったです」
「まぁ、ちょっとコーヒーでも飲んで休んでけ」
 麻也以上にほっとしたような社長は弱々しく勧めてくれた。
 しかし、麻也はみんなに悪くて、
「あのー、打ち上げは…?」
「あっ、そうか、忘れてた。俺はこのくっだらねぇ雑誌に電話して抗議してから行くけど、麻也はどうする? 行けそうか?」
 そうは言われても、麻也はすっかり疲れ切ってしまい、
「いや、困ります…鈴木さん、俺今夜はどこで寝られるんだろう…?」
「じゃあ、私と須藤さんと川の字で」
「嫌ですよ、私達まで、諒さんに殺されちゃうじゃないですか」
 みんなの話題に、麻也も合わせたが、胸の中では、
(今の諒ならどうかな)
と、思っていた。
 それにしても、麻也にはもう出かける元気はなかったので、部屋で休むことにしたが、鈴木に意外なことを訊かれた。
「あのー、部屋はダブルにします、ツインにします?」
「えっ、選べるの?」
「はい万が一を想定して」
諒に相談したかったが、追い出されたら真樹の1人使いのツインに泊めてもらうのだから、それまでは広いダブルベッドで休んでおくことにした。
 と、鈴木が携帯に電源を入れるとすぐに諒から電話がきた。
「ああ、すみません、麻也さんは今お2人の部屋で休んでます。私は今荷物を整理中で。楽屋で麻也さんが倒れたとき、僕の他には須藤さんしかいなかったので…今替わりますね」
 麻也は電話を渡された。
 諒は何も知らないのだとわかって、麻也ほっとした。
「もしもし…」
「麻也さん、休んでいてくれたらそれでいいよ。悪いけど俺、二次会まで抜けられないみたいだから、鈴木さんにいてもらって」
「えー、でも悪いじゃん…」
 久しぶりに自然と電話できて、麻也は内心嬉しかった。
 自分でも困ったが、声まで笑いを含んでいたように思えて、少しきまりが悪かった。しかし諒も似た思いだったらしく、かつてのように、
「えー、だって俺、心配だもん。俺の留守中にまた具合悪くなってたら困るじゃん」
「うん、じゃあそうする…って、鈴木さんこそ大丈夫なのかな」
「俺交渉するから電話替わって」
 麻也は笑いながら鈴木携帯を渡した。
 でもあの写真のこと諒には伝わらないんだろうかと思いながらいつしか麻也は眠っていたらしい…
 諒と鈴木の話し声で、麻也は目が覚めた。

★BLロック王子小説21-31「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-29 22:03:25 | ★ディスティニー21章
 その夜のライブでは、麻也自身も嬉しくなるようなほのぼのしたキスシーンがステージでは決まったのに…
 ライブの直後、気がつけば、須藤と鈴木に麻也は着替えさせられタクシーに押し込められた。
(…打ち上げどうするんだろう…)
 ホテルで連れて行かれた部屋にいたのは困り切った社長だった。
「麻也、これは本当なのか? 俺はもう…」
 と写真週刊誌の見本らしいページを渡された。
 そこには、自分が鈴音にホテルの廊下で抱きつかれ、たしなめている荒いモノクロ写真が載せられていた。
(一体、誰がこんなの…)
「麻也、週末にこれが出ちゃうんだ。真実を話してくれ。俺が昨日まで聞いていたのと違うじゃないか。」
「すみません、ケンの部屋に入ったのは鈴音ちゃんに抱きつかれて、メイクやコロンの香りがジャケットに付いたような気がして気分が悪くなったからなんです」
 みんなが言葉を失っていた。
 やっと社長が、
「…ホテルで会ってたのか、お前が…」
 しかし、自分が悪くない麻也ははっきりと、あの日の空白の時間のことを説明した。
 木内の名を出されてこと、地元のイベンターらしき男にに案内されてホテルに戻ったこと。
 待ち受けていたのは鈴音とマネージャーですぐに鈴音と2人きりにされ、思いを打ち明けられ、抱きつかれたこと。もちろんそれは断り、少し説教をしたこと。
「でも、カメラなんて…」
 しかし、そこまで聞いてみんなはほっとして口々に、
「それで向こうの事務所は怒鳴り込んで来ないのか…」
「悪質ですよ、でもなんでカメラを仕込んだんですかね?」
「カメラは別じゃないですかね。あと、でもあっちの事務所は、どうせならあのアイドルを麻也さんにもらってほしいみたいですよ。」
 と、鈴木が言うと須藤も社長も絶句していた。
 麻也はそのウワサを聞いた時の悔しさを思い出し、泣きそうになった。が、あとは鈴木が言葉を選んで続けてくれた。
「この業界だったらどんなことがあるかわからないし、変な男に付きまとわれる前に、王子様にもらってもらう方がいいということで…」
「なんじゃそりゃ」
 そこで、麻也は嫌なことを告白した。
「あと、真樹に、その時着ていた白いシャツを預けたんです。あの子の口紅がうっすらと付いているのに、真樹は気づいてくれたので」
 そのうち諒に知られないうちに、真樹が処分してくれました。
 どうにかそこまで言ったものの、
(こんな写真があるんじゃな…)
 と、疲れもあって麻也は諦めムードになってしまった。
 しかし…

★BLロック王子小説21-30「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-28 21:47:41 | ★ディスティニー21章
「そうですよ、真樹さんや直人さんがこの大事な時に撮られたら…」
「あら、俺はいいの?」
 諒がひがむと鈴木は驚き、
「えっ? まさか浮気とか?」
「なんで俺が浮気なんだよ」
 「いや、諒さんのヤバいネタはそれくらいしか考え付かないんで、クスリもありえないし」
 そこで諒は思った。
 (麻也さんが話題にならないのは、やっぱり何もなかったってことなの? 諒くん、また早とちり?)
 延々と続く、ジェットコースターのような日々。
 麻也への熱い想いとそれに水をさす悪いウワサや女たち。
 ありがたくも人気急上昇中のミュージシャンとしての多忙なスケジュール。
…これ、いつまで続くのかな?
(麻也さんの心配さえなくなったら…)
 その時、鈴木の携帯が鳴った。
「大丈夫です。遅くなってすみません。今マンションで、諒さんとええ、もう麻也さんの荷物持って帰ります。
えっ、直人さんも? 志帆さん、あー直人さんの…」
 相手は須藤なのだろうが、諒が、話の内容に気を揉んでいると、
「社長宅でデートねぇ考えましたね。それじゃあこれから…」
 と電話を切られそうになったのに、慌てて諒は電話をひったくると、主は意外にも、真樹だった。
ーあれ、どうしたの諒?
「いや、何だかそっちが楽しそうだから。まさか真樹からの電話とはね~
ー何だよ、いいじゃん、じゃあ諒、おやすみ~
「えっ、何だよ冷たいじゃん、仲良くしてよ
ーだから、明日。
 よそでよくあるのと違って、残念ながら、麻也と真樹の兄弟は声も話し方も全く似ていないのだ。
「俺そっち行ってもいい?」
ーなんでだよ
「寂しい」
 すると真樹は意地悪そうに
 恵理ちゃんも志帆ちゃんももう帰ったけど、俺は兄貴と同じ部屋だから、諒の寝るとこないよ。
 ひどいと言い返そうとして、諒はそれをやめた。
 麻也が無実らしいと分かって、手のひらを返すような自分も嫌だと瞬時に思ったのだ。
 それに麻也に会っても一体どんな顔をすれば…それは明日にも言えることだけど…
ーまぁ、諒もせっかくだから休みなよ。諒子ちゃんもさ、
 そう言ってくれる真樹の声は優しくなっていて諒を責めるものではなかったが、やはり声にも疲れがにじみ出ているようで、諒は礼を言って電話を切った。
 その次の移動日も麻也はサロンバスのソファーに転がっていた。
 付き添って座ってくれていた付き人の後藤が誰かとかわった。
 諒だった。
 そっと手を握ってくれた。
 麻也は何も言わない方がいいような気がして、その手を握り返しただけで、休むために目を閉じた。


◆小説の更新、超不定期になります(2019夏)

2019-07-27 21:39:50 | このブログについて
…暑さのためでございます。本当に申し訳ございません…
(年令のせいもあるのかも…(T_T))
もう、今から一家でひっくり返っておりまして…
夏対策はしていたのですが、予想外の天候不順でした。
更新作業ができる日は最優先でアップします。
…よろしくお願い致します。
(7/28追記)
…なのに28日今日、21-30をアップしてしまいました…
でも34℃が続く今週はやっぱり不安(T_T)