BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-64「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-02-10 22:19:10 | ★ディスティニー21章
 どうして自分を信じてくれないんだ…
 麻也は言葉を失い、部屋に上がる気になれず、玄関のドアを再び開けて部屋を出てしまった。 
 ぐったりしている諒もそれを止めなかった
。追ってきてもくれなかった。
 (逃げるわけじゃない…)
 諒が周りに吹き込まれたことは大方察しがつく。
 麻也もやけを起こして、
(言ってやればよかったのかな、お前の男は
…って…無理だよ…)
 そこまで考えるとさすがにめまいがして、麻也はエレベーターから降りると壁にもたれかかってしまった。
(これからどうしよう、こんな遅い時間に…)
 それにもう日が変わって、今日は諒の25才の誕生日なのだから、戻らないわけにもいけないし…
 (数時間前には武道館に立ってたのに、何でこんな…)

★BLロック王子小説21-63「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-29 12:41:44 | ★ディスティニー21章
 そこにやってきたのは麻也のマネージャーの鈴木だった。
 そして頭を下げっぱなしの冬弥には気づかぬふりで、
「麻也さん、諒さん、皆さんのお見送りを…」
 するとよろけながらも動こうとする麻也を、諒はパートナーらしく手伝い、肩を抱いて歩き出すと冬弥に向かって、
「夢でも見てたんじゃないの」
と冷ややかに鼻で笑い、鈴木の後をついていった…
 来客の見送りを終えると、社長はメンバーと身近なスタッフでしみじみ飲みたいというムードのようだったが、諒は、
「社長ごめんなさい、麻也さん限界なので俺たちは帰ります」
麻也はその言葉に内心感謝した。ロを開く元気はなかったが。
 社長は2人とも過ごしたい気持ちと、今夜に飲みたい気持ちのせめぎあいに一瞬困ったようだったが、
「悪い。じゃあ気をつけて。今度は昼の宴会をセッティングするから…」
「はい、よろしくお願いします」
 そう挨拶すると諒は麻也の肩を抱いてビルを出た。
 タクシーに諒と2人で乗り込んだ時、麻也はほっとして諒に微笑みかけようとした。
 しかし、その横顔のあまりの冷たさ、麻也は驚き、前を向いた。
 そんな諒の冷たさはマヤが初めて見るものだった。
 思えば見送りの時、確かに他の客に心配そうに見られているのは気づいていたが…
 諒の冷たい表情は崩れない。

 冬弥の前では笑っていた諒だが、リビングに入るなり麻也に、やり切れないというような強い口調で尋ねてきた。
「ねえ麻也さん、あれどういうこと!?」
 麻也はたじろいでしまったが諒は収まらない。
「もう俺疲れちゃったよ。もうトシだからね」
「えっ? どういうこと?」
「麻也さんがロリコンだということがよーくわかりました」
「どういうことだよ」
「あんなところで恥ずかしい」
「はあ?」
「もういいよ、俺もう寝るわ」
麻也も不本意で言い返した。アイツのせいで…
「何だよ、何がいいんだよ、お前俺より初対面のあいつを信じるわけ?」
「じゃあ、何であんたのホクロのことを知ってるの?」
「知らないよ、楽屋で誰か着替え中に外部の人間がうっかり入ってくることも珍しくはないじゃん」
 しかし、諒はひるまない。
「もうね、いろんな人からいっぱい入ってくんの。情報が。鈴音、冬弥、そのまわりのコたちをあんたが手ェつけまくってるって。もう俺疲れたよ…」

★BLロック王子小説21-62「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-28 13:24:17 | ★ディスティニー21章
 しかし、お約束のキスシーンは諒の膝をついての様子がまるでプロポーズのようだと盛り上がり…
 色々あったが3ヶ月に及んだディスティニー・アンダーグラウンドのライブツアーはようやくお開きとなったのだった…
 
 大きな打ち上げをしないわけにはいかない、ということで、麻也は体がもの凄くつらかったが、スタッフにそれとなく支えてもらい、頑張って参加した。
 会場はオシャレなスペースだったが、麻也は会場の隅の椅子に、後藤に付き添ってもらって座っているのがやっとだったが、年齢の高い客も多かったせいか、早くお開きになってくれた。
 だが、その後は有名なクラブのワンフロアを貸し切っての二次会で…それにも麻也は出ないわけにはいかず…
 東京なので一緒に飲む客は有名人が多い。
 そのくせ見られるのは嫌と個室のようなスペースにいる人間もいるので、メンバーは挨拶して歩くのが大変だった。
 麻也は疲れがとんでもないことになっていたので空いている席のソファにもたれかかるように座ってしまった。
 スタッフがペリエ持ってきてくれる。
 来客はみんな、麻也を疲れさせるのも気の毒といった様子でいたわりの言葉をくれる。
 麻也をフォローするように客の席を回っていた諒が戻ってきてくれて、優しく、
「もうそろそろお開きみたいだから…」
と言いかけて口をつぐんだ。
「どしたの?」
「いや~な人たちがいるから、お見送りの時は須藤さん達から離れないようにしてようねって。」
 この言葉に麻也はソファのひじ掛けに倒れ込んでしまった
(それって…)
 その時、お開きの乾杯になった。麻也は諒に抱きかかえられて立ち上がり、グラスをかかげた…
 みんなが帰るムードになったとき、すかさずひとりの青年がテーブルを挟んで麻也の前に立ちはだかった。
 ずいぶん大人っぽくなった冬弥だった。
 嫌だという前に、とんでもないことを叫ばれた。
「麻也さん、もう一度俺を抱いてください!あの背中の二つのホクロ、もう一回俺に拝ませてください!」
 麻也はあっけにとられて何も言えなかった。
 全く身に覚えのないことを…
 冬弥が土下座しそうになったのはスタッフが止めた。
 黒のゴージャスなドレスの裾、真っ赤なルージュの女の唇が通り過ぎていくのが、意味もなく視界に入った気が、麻也にはした。
 麻也が絶句していると…

★BLロック王子小説21-61「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-24 07:23:32 | ★ディスティニー21章
 リハーサルも順調に進み、楽屋もまあまあ…
 というのは、ずっと諒にまとわりつく、売れっ子女優の響子ご一行がやってきていたからだ。まあ、夫も一緒だったのでおとなしくはしていたが。
 しかし彼らは麻也につきまとう大御所俳優の2世の、藤田冬弥も連れてきていたのだ。
 それを軽くいなして…いよいよステージ衣装に着替えをしていると、真樹が近づいてきて小声で尋ねてきた。
 「兄貴、背中のほくろ大きくなってない?」
「えっ?」
 こんな時に言わなくても…と少し麻也はむっとしてしまった。
 それは自分でも日頃から、皮膚ガンだったらと少しは心配しているということなのかもしれない。
 二人の動きが止まっていたのに気付いたらしい諒が、
「どうしたの? 大丈夫?」
「いや、兄貴の背中のほくろが気になって。両方を大きくなったような気がして。こんな時にごめんね」
 真樹は、麻也の肩甲骨の下、背骨を挟んで左右対称の真っ黒な大きな二つのほくろのことを言っているのだ。
 天使の翼をもぎ取った痕のよう、などと諒はいうけれど実はそれほどは大きくない。
 すると、諒はあっさりと、
「ううん、大丈夫。大きくなってない。ゆうべ確認したし」
 言ってから3人で真っ赤になったが諒が立て直し、
「諒子ちゃんが言うからには大丈夫。ほら、着替えて着替えて」
 メイクも髪も美しく仕上がるとステージに上がる直前に4人揃ってポーズをキメて、いつもとおり撮影。

 麻也はツアーラストのその武道館に臨む、特別な緊張はなかった。
 最後まで気持ちの糸も切れないようにしていなければとは思ったけれど…
 もう後は何も考えないようにする…
 
 とは言うものの、早いうちに麻也はジャケットを脱いでしまい、いつぞやスタイリストの三田からプレゼントされた白の総レースのシャツでギターを弾きまくっていた。
 曲の合間に脱いだのだが、それだけでキャーキャーと観客席から歓声が上がり、麻也がが照れ笑いを浮かべると、お約束のようにまた、かわいい、キャーキャーと歓声があがる。
 でも、心配そうに見いる観客もいた…
 麻也の体調不良はもう知れ渡っていた。 
もちろん身内ははっきり知っていた
 麻也の体調が悪いのが知られていること、そしてそれは鈴音との恋愛トラブルのせいと怒っている、追っかけが多いことも。

★BLロック王子小説21-60「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-23 17:32:41 | ★ディスティニー21章
 その時、男の声が奥の方から聞こえてきた。電話をしているらしい。
「はい、リハーサルまでには。麻也さんはぐっすり寝ていて心配ないです…」
 諒の声だった…
 ほっとして麻也はシーツの上に倒れこんだ。
 それじゃあ、と言って現れた諒はジーンズに上半身は裸で、
(…あっ…)
「麻也さん、おはよ」
 諒もはにかんだ表情だ。目をそらして、
「あ、あの、須藤さんが遅刻しないでって…」
「あ…うん、わかった…」
とは答えたが…
「麻也さん、どしたの?」
「いやあ…ここどこなのかなーって…もうびっくりしたから…」
すると今度は諒がびっくりして叫ぶ。
「えーっ! ゆうべの事覚えてないの?」
「ごめん…夢だと思ってたんだ。諒があんなに…」
 それを聞くと諒は顔を赤らめながら、
「いや、何、何なの? こんなお高いお部屋で大きなベッドでとにかく麻也さんが2人ほっこりしたかっただけなのに、〈眠れない!〉ってベッドにあぐらかいて、据わった目で俺に圧力かけてきたんじゃない」
「ええーっ…、俺そんなこと…」
「でも、スッキリ目覚めたんでしょ?」
 確かに…そう、ライブのほてりを冷ますには諒と激しく抱き合うのが一番なのは変わりがないんだけ…ど
「しばらくうまくいってなかったから、諒がそんなことをしてくれるなんて思わないかったんだ…」
「麻也さん…」
「諒は歩み寄って優しく抱きしめて長いキスをしてくれたが、顔を離すと照れて、
 やばい、ライブ前でよかった…なんて…「…そうじゃなかったら、押し倒してた」
 そして、麻也の服を手渡してくれながら、
「今日はビデオの撮影だから、キスシーンは普通にしようね」
と、また照れている。
「えっ、だって昨日…」
「んー、いいのっ!諒子は幸せだからいいのっ!満足してこれから武道館に臨むのっ!
あといけない所にキスマークつけといからよろしくっ!」