諒はしょんぼりとしてしまった。
「…俺…そんな…」
冗談のつもりが失言になってしまい、ますます空気を悪くしてしまった麻也…
(ど、どうしよう…)
しかし、それを破ってくれるのはやっぱり直人だった。
「そんなわけないじゃん。俺、何度麻也さんにキスマークを自慢されたことか」
「ええっ!」
「いや、1回だけだよ」
「ううん、楽屋で衣装に着替える時、何回か」
「ああ、そういえば…」
「そういう日は、麻也さんと諒がいつも以上に色っぽく見えて、目のやり場に困りましたよ」
そして諒に向かって、
「心配しないで。ずっと二人は最高のカップルなんだから」
「じゃあ、ドームの成功は決まりだね」
真樹の笑顔の無邪気さが頼もしかった。
「こんな感じで合宿したいね」
「そうだね。レコーディング前とか」
「そういえば俺たち、野外のイベントもやったことないし」
「ドームの後なら、トリになれるかも」
「でも、夏の野外は…ってトリなら夜か」
すると直人は笑って、
「夜でソロの野外なら楽しいんじゃない?」
「そういやそうだね」
「ファンの夏休みの思い出になるから喜んでくれると思うし」
麻也は何も言えなかった。
前のバンドのことを思い出して…下手なボーカルにイライラしたが…
(…昼間だったけど、美少年バンドとしての濃いメークは好評だったっけ…)
麻也に合わせて、全員アルコールは入らなかったのに、リビングでの雑魚寝まで4人のおしゃべりは盛り上がって、ほとんど眠れなかった。
それでも、そのまま用意をして、麻也が手配した大型タクシーに4人で乗り込み、4人は地元の「東京都」の町田へと向かって帰って行った…
(この章終わり)