BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説24-29「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-05-10 22:11:00 | ★ディスティニー24章
 諒はしょんぼりとしてしまった。
「…俺…そんな…」
 冗談のつもりが失言になってしまい、ますます空気を悪くしてしまった麻也…
(ど、どうしよう…)
 しかし、それを破ってくれるのはやっぱり直人だった。
「そんなわけないじゃん。俺、何度麻也さんにキスマークを自慢されたことか」 
「ええっ!」
「いや、1回だけだよ」
「ううん、楽屋で衣装に着替える時、何回か」
「ああ、そういえば…」
「そういう日は、麻也さんと諒がいつも以上に色っぽく見えて、目のやり場に困りましたよ」
 そして諒に向かって、
「心配しないで。ずっと二人は最高のカップルなんだから」
「じゃあ、ドームの成功は決まりだね」
 真樹の笑顔の無邪気さが頼もしかった。 

「こんな感じで合宿したいね」
「そうだね。レコーディング前とか」
「そういえば俺たち、野外のイベントもやったことないし」
「ドームの後なら、トリになれるかも」
「でも、夏の野外は…ってトリなら夜か」
すると直人は笑って、
「夜でソロの野外なら楽しいんじゃない?」
「そういやそうだね」
「ファンの夏休みの思い出になるから喜んでくれると思うし」
 麻也は何も言えなかった。
 前のバンドのことを思い出して…下手なボーカルにイライラしたが…
(…昼間だったけど、美少年バンドとしての濃いメークは好評だったっけ…)

 麻也に合わせて、全員アルコールは入らなかったのに、リビングでの雑魚寝まで4人のおしゃべりは盛り上がって、ほとんど眠れなかった。
 それでも、そのまま用意をして、麻也が手配した大型タクシーに4人で乗り込み、4人は地元の「東京都」の町田へと向かって帰って行った…
 
(この章終わり)


★BLロック王子小説24-28「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-05-05 22:26:00 | ★ディスティニー24章
「でも、ドームが成功すれば俺、そんなことなくなるからさ」
「…」
 諒の、やや悲しげな言葉に麻也たち三人は何も言えなかった。
 すると諒はこんなことを言い出した。
「高校の学園祭から始まって、小さなライブハウス、都心の大きなライブハウスでメジャーデビューが決まって、ホールでお披露目。そしてツアーやって会場が大きくなっていって、夢の渋谷公会堂。信じられなかった武道館…それが俺達ミュージシャンの双六じゃない? それで、最も幸運な、特別な最高の上がりは東京ドームだ」

 この90年代は、サウンドもビジュアルも煌びやかなロックが花開いた時代だった。
 ファンもその中から勢いのあるバンドに夢中になり、東京ドームを成功させることは、
殿堂入りのように称賛した。誇りにした。

「でも、武道館までかなえても俺は、麻也さんのパートナーである自信が実は無かったんだと思う。だから何も悪くない麻也さんを疑って傷つけた」
 しかし、諒の悲壮感を拭うように直人が、
「でも諒、玄関で麻也さんと諒の笑顔見た時、やっぱり運命の二人なんだって思って安心したよ」
 真樹もしみじみと、
「さらに、諒が言うとおり今度のドームで、俺たちトップのうちのひとつになるんだよね。そしたら…もう諒の兄貴との恋愛での不安材料がなくなるんでしょ」
 諒は難しい顔をしてうん、とうなずく。
 やや重い空気になってしまった。
 また憂うつになった麻也は冗談に紛らすしかなかった。
「ドームの先は海外進出、ってなるのかな?それなら、ドームが終わっても諒のえっちが下手なら、俺、海外進出する」
「はあ?」
 みんな目を丸くした
 諒は真っ青になって叫んだ。
「そんな…俺下手なの? 」
「兄貴!」
「そういう話じゃないでしょ!」


★BLロック王子小説24-27「ディスティニーアン ダーグラウンド」

2021-05-02 21:29:00 | ★ディスティニー24章
「えっ? どうかしましたか?」
 ウハウハとメロンを受け取った諒はとぼけてごまかそうとした。
「いや、メロンは麻也さんのリクエストだよ」
「兄貴ホントか?」
「う、うん。まあ直人もあがってよ」
 
 決起集会ならせめて、須藤や鈴木くらいは呼んでもよさそうなものだったが、やっぱり4人だけでだべりたかった。
「それでは麻也さんの退院と、東京ドーム決定を祝して乾杯!」
 直人の音頭で、ジンジャーエールのグラスを合わせ、飲み干した。
 まずは、麻也がふたたびみんなに今回の入院についてみんなに謝ったが、直人が、
「いやぁ、麻也さんを働かせ過ぎたことは俺も反省してるよ。麻也さん、本当にごめんなさい。申し訳ありません」
「いや、そんなことないから。俺が薬の飲み方を間違えただけだから」
 本当のことは直人も察していると思ったし、やっぱり麻也もこれ以上は口に出しては言えなかった。
 すると諒が、
「直人も真樹も本当にごめんね。俺が麻也さんを大切にするのが足りなかったのが悪いんだ」
「諒…」


★BLロック王子小説24-26「ディスティニーアン ダーグラウンド」

2021-04-27 21:53:00 | ★ディスティニー24章
 恭一の店を出てから、麻也は諒に怒られた。
「麻也さん~、ギターをじっくり見るのは、オフ明け、またギターに戻ってからです!」
「はあぃ…」
 と答えたら、いつの間にか手をつながれていた。
「さて、服でも見に行きますか」
 すました表情で諒は言う。麻也は笑ってその手を握り返した。
 歩き疲れて入ったカフェで、真樹と直人からメールが携帯にきていたのに気づいた。
ー明日はピザ持っていっていい?
ー麻也さんの食べたいもの
 教えて
「あー、みんなありがたいねえ~」
 諒はしみじみそう言っていたが、麻也は無邪気にスイカが食べたいと言った。
 すると諒はニヤリと笑い、
「メロンにしたら? スイカなら実家でも食べられそうじゃん」
「えー、そうだけど…スイカも食べたい」
「じゃあ2つともリクエストしたら。明日は麻也さんの退院祝いがメインなんだから」
「え? 他に何かあるの?」
「ん? 決起集会も兼ねてるからさ。大きな卵の」
 その頃、東京ドームは「ビッグ・エッグ」というニックネームでも呼ばれていたのだ。
 
 …次の日は、メンバー4人で、麻也たちの部屋で宴会だった。
「えっ? メロンは諒のリクエストだったの?」
 真樹と直人にえらく怒られた。
 

★BLロック王子小説24-25「ディスティニーアン ダーグラウンド」

2021-04-24 21:24:00 | ★ディスティニー24章
(ドームの情報が解禁になってたらねえ…)
 元気になった自分を嬉しそうに見ている目の前の恭一に、一番最初に東京ドームが決まったことを教えたいのに…
 情報が解禁になったら、一番先に知らせに来よう。
「やー、デートの最初に選んでくれたなんて嬉しいよ」
「うん…全部、恭一のおかげで解決できたから…」
 諒がいるので麻也はあまりはっきりと礼を言うことができなかった。
 嫌なことをすべて思い出してしまうから…
 それは恭一も諒も同じなのだろう。
 恭一の部下が持ってきた缶コーヒーを三人でひとくち飲むと、恭一は、
「でも、まだオフなんでしょ?」
「うん…でも俺ったら、残りわずかなのにメンバーで飲み会とか帰省とか詰め込んじゃって」
「麻也、それなら俺の方はいつでもいいよ」
「よくないよ。まずは恭一にごちそうしたいんだ」
 じゃあそれなら、と恭一は受けてくれたが…
 ギターはあまり見せてもらえなかった。
 諒がにらんでいたからである。
 そしてとうとう諒に首根っこを掴まれるようにして店を後にする羽目になってしまった…