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BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-59「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-22 18:04:28 | ★ディスティニー21章
「ちょっと兄貴に水を…他になんかないの?
兄貴、大丈夫かよ…」
「明日の夜まで薬のまないから大丈夫だよ」
 と真樹に言いながら、麻也は真樹にではなく疲れと病気のせいでイライラしてしまい、それを紛らわそうと、まだ手元にあった缶を開けてしまった。
「兄貴!」
「あーあ…」
 と、近くにいた直人が、ソファーに座っていた麻也から缶を取り上げた
「ごめん、すごく喉が渇いてて…」
「気分悪くなったらすぐ言うんだよ」
 しかし、麻也にはその時の諒にかまってもらった記憶がない…
「…やっぱり今日のライブは良かったよ
 明日、明日もカメラが入るけど、今日のクオリティを保ってくれれば…」
そう言ったのは誰だったのか… 
「そう言ってもらえると助かる。じゃあ、プラス、ファイナルの強さということで…」
 ということは明日もキスはなしなのね…
 と思った瞬間に麻也の意識は途切れ、でも誰かに抱きかかえられてどこかに連れていかれるような…
 でもちょうどいいや…俺これから帰るんだし…
 
 次の朝…
 
 …麻也はうっとりした気分で目が覚めた。
 ほどよい朝の光。
 …実はさっきまで、はっきりした夢の中で素肌の諒と抱き合っていた。
 ほどよい激しさで、諒は自分を高みに連れて行ってくれて…
(もう諒ったら…)
 でも。
(えっ、ここどこ?)
 知らない部屋…真っ青になって麻也は飛び起きた。
 そして、自分は全裸…
 (俺、本当にそうゆうことを…でも誰とだよ~)
 白とマホガニーのシンプルで上品な内装のこの広い部屋で…


★BLロック王子小説21-58「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-21 21:57:02 | ★ディスティニー21章
 また人まかせで着替えを済ませると、来客の誰かが、
「諒くん、明日はキスシーンやってよ~」
と、冗談ぽく諒に言っているらしいのが聞こえた。
 しかし、その後が麻也にはショックだった。
「やらない! あんな見世物! あんなのやらないと見に来てくんないの?」
 麻也は、諒の方は振り返られなかった。
 ショックで顔なんか見られなかった。
 諒の声のトーンだけでは判断できないが…
(見世物って…今の諒にはそんなに嫌なことなのか…)
 本来の働きの頭ではないだけに、ものすごく麻也は傷ついた。また麻也は固まってしまった。
 そんな麻也の体を、反省会の部屋へと立ち上がらせてくれたのは、付き人の後藤とその後輩だった。
 何の心の準備もなかったので、自分はどんな表情をしていたのか…
 会議室に移って、メンバーとごくごく身近な人間だけで、とりあえず今日の反省会と食事…
 その最中で、麻也が飲んでいた缶ジュースの缶を見て真樹が大声をあげた。
「ちょっと、兄貴、それアルコールじゃないの?」
「え? ジュースじゃないの?」 
「アルコール以外のもの何にもないの?」
諒はイライラと叫び、
 「これジュースじゃないぞ、カクテルじゃん
 会議が白熱していたので、誰もそこまで気が付かなかったのだ。
 鈴木は真っ青になった。
「すみません、アルコールを避けてジュースと思って…」
 確かに缶がフルーツの絵がついているが…
「兄貴もう飲んじゃった?」
 「ごめん、もう1本あけちゃった」
 と言いながら、喉が乾いていた麻也は無意識に2本目の缶のカクテルをもう一口飲んでしまった。

★BLロック王子小説21-57「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-19 21:41:22 | ★ディスティニー21章
そう。
 客席までがやけに遠く感じられる。それは、普通なら客席の熱が低いせいだが、自分の感覚が狂っているせいなのかもしれないと思うと不安になった。
 ライブを進めていっても残念ながら手応えは薄いままで…
 思えば、今日はカメラが入ってるからキスしないよ、と諒にアンコール直前に念を押されたくらいだから、身内はかなりハラハラしていたのだろう。
 それでもやっぱり武道館の空気は別格なのだ…と、麻也は信じたかった…
 終演後に楽屋で客席にいた知人達から、笑顔でノリノリだったと言われたが、麻也はあまりステージのことを覚えていない。
 ただ会場全体はやっぱり熱かったということだけは断片的に残っている…
 ステージから降りる時、両脇からみんなが支えてくれたのがありがたかったが、
(これじゃ明日が思いやられる…)
 なんと言ったらいいか、麻也は頭と体がバラバラに疲れていた。

★BLロック王子小説21-56「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-18 13:18:21 | ★ディスティニー21章
 すると諒は言葉を選んで、
「ライブ前だから思い出したくない」
 そう言って…すると直人が、
「悪気はないんだろうけど、口の利き方知らない人っていなくならないよね…よりによって本番直前にそんなのが現れたか…」
 しかし、諒は直人の言葉にかなり救われたらしく、
「悪いことの後にはいいことがあるっていうから、今晩のライブは、めちゃめちゃいいんでしょ…」
 と直人にありがとうと言うように微笑むと、諒はいつものように男らしく食べ始めたが、すぐにその箸は止まってしまった。
 その後、麻也は流れ作業で他のメンバーと同じくメイクもしてもらい、衣装も身に着けてステージに上がっていったものの…
 ステージはすでに観客の熱に飲み込まれており、体が思うように動かず気力だけの麻也は、あたかもギターという武器を振りまわすだけの武者…
(…このくらいの空気、普段ならどうってことないのに…)
 どうってことない?
 麻也は自分の感覚に驚いた。

★BLロック王子小説21-55「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-17 06:50:02 | ★ディスティニー21章
すると真樹も神妙な面持ちで、
「いや、兄貴のおかげだよ…でもそうだね、あの時は、恐る恐る誘ったんだよね…」
「そっか、恐る恐るか…でも、感謝してるよ。本当に…」
 何か二人とも涙を誤魔化し、しんみりしていると、
「じゃあ、本番よろしくお願いします!」
 スタッフの声で2人は我に返った…
 休憩も兼ねての食事も、やはり麻也は箸が進まなかった。
 結局ピーチのヨーグルトとコーヒー牛乳、あとバナナ…
「兄貴ステージ終わりはもっと食べようね。
 明日もあるんだから」
 麻也も悪いと思ったので、
「うーん、アルコールがあればねー」
 と冗談で返すと直人が、
 「アルコールならなんでもいいの? それならコーヒー牛乳飲んで、カルーアミルクって思えばいいんじゃない?」
 真樹があっそれいいかもしんない、と明るく返してくれるので、
 麻也としては不本意ながら、
「そうだよね、それぐらいしかないかもね」
 と答えるしかなかった。
 その時、隣の部屋で取材を受けていた諒が暗い表情で戻ってきた。
 しかし、真樹たちは特に何も言わない。
 だが、諒はコーヒーを少し飲んだけで食べるものには箸をつけようとしないので、麻也は心配になった。
 でも最近の関係から尋ねられずにいると、それを察して自分も気になったらしい真樹が、
「諒、どうしたの、何かあったの?」