わたしが聞いたところによると、あるとき尊き師(ブッダ)はサーヴァッティー市のジェータ林 ~孤独な人々に食を給する長者~ の園におられた。そのとき一人の容色麗しい神が、夜半を過ぎたころジェータ林を隈なく照らして、師のもとに近づいた。そうして師に礼して傍らに立った。そうしてその神は、師に詩を以て呼びかけた。
258
多くの神々と人間とは、
幸福を望み、幸せを思っています。
最上の幸福を説いて下さい。
259
諸々の愚者に親しまないで、
諸々の賢者に親しみ、
尊敬すべき人々を尊敬すること、 … これがこよなき幸せである。
260
適当な場所に住み、
あらかじめ功徳を積んでいて、
みずからは正しい誓願を起こしていること、 … これがこよなき幸せである。
261
深い学識あり、技術を身につけ、
身をつつしむことをよく学び、
ことばがみごとであること、 … これがこよなき幸せである。
262
父母につかえること、
妻子を愛し護ること、
仕事に秩序あり混乱せぬこと、 … これがこよなき幸せである。
263
施与と、理法にかなった行いと、
親族を愛し護ることと、
非難を受けない行為、 … これがこよなき幸せである。
264
悪をやめ、悪を離れ、
飲酒をつつしみ、
徳行をゆるがせにしないこと、 … これがこよなき幸せである。
265
尊敬と謙遜と満足と感謝と
適当な時に教えを聞くこと、 … これがこよなき幸せである。
266
耐え忍ぶこと、
ことばのやさしいこと、
諸々の道の人に会うこと、
適当な時に理法について聞くこと、 … これがこよなき幸せである。
267
修養と、清らかな行いと、
聖なる真理を見ること、
安らぎ(ニルヴァーナ)を体得すること、 … これがこよなき幸せである。
268
世俗のことがらに触れても、
その人の心が動揺せず、
憂いなく、汚れを離れ、安穏であること、 … これがこよなき幸せである。
269
これらのことを行うならば、
いかなることに関しても敗れることがない。
あらゆることについて幸福に達する。 … これがこよなき幸せである。
中村元先生の「ブッダの言葉」を聴いています。中身はスッタニパータについてのお話です。原始仏教の経典ならではで、まるでお釈迦様の生の声を身近に感じているようです。中村先生の話し方も心地良く、つい繰り返し聴いてしまいます。先生は「こよなき幸せ」を「ブッダの幸福論」と言っています。人生も折り返し地点を過ぎると、いろいろ考えされられますね。お釈迦様って凄いです。ありがたい教えです。
≪関連リンク≫
スッタニパータ - Wikipedia