「ゴースト・ガイド」 一部引用編集簡略版
イギリス人は歩くのが好きだ。パブ・ウオークスというが、田舎道に面したパブにつぎつぎと寄っていくというもので、地方ごとに一周コースを載せたガイドブックが売られている。さらに、どこの書店に入っても、「ウオーキング・ガイズ」と呼ばれる、歩くためのさまざまなコースを具体的に示した本やパンフレットのコーナーがかならずある。立ち読みするだけでも楽しい。
書店には、その土地土地の「ゴースト・ガイド」もかならず売られている。お化けのガイドブックだ。その地方のお化けの伝説が紹介され、どこの城や古い館でどんなお化けが目撃されたかを集めたものである。イギリス人はお化けが好きなのだ。
お化けが話題になると、喜々として話す。お化けは恐れられるよりも、”仲間”のような存在なのだ。イギリス人は幼いときから妖精に親しんで育つし、イギリス社会の大きな特徴として、奇人や変人を好むことがあるからなのだろう。
もちろん、地方へ遊びに出かけるのならば、その近くにイギリス人の友人が住んでいたほうがよい。友人がいなくても、マナーハウスやインで休日を過ごしているイギリス人の夫婦や、ドイツ人などのヨーロッパ大陸から遊びにきた人々と知り合える。
イギリス人は美しい田園のような地方と並んで、家に強く執着している。ホーム ― 家はイギリス人にとって「城」であるといわれ、全生活の拠りどころとなっている。そして庭づくりを好んでいる。どの家も花で飾られている。建売住宅を買っても、自分で塗りかえたり、改造して手を加えている。ドゥ・イット・ユアセルフ ― 日曜大工は、国民的なホビーなのだ。
参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長