「古きよき伝統を守る」 一部引用編集簡略版
イギリスは伝統の力によって、イギリスであり続けている。人は家族であれ、郷土であれ、国であれ、自分がそこに属していると感じることによって安心する。だから人にとって根をもつことは大切だ。伝統は国民を統合する力をもっているが、王室はイギリスの伝統を支える中心的な役割を果たしている。
チャールズ皇太子は1997年にダイアナ妃の死後に、アフリカのスワジランドを訪問した。そしてムスワティ国王をはじめ族長や、その婦人たちを前にして、つぎのように挨拶している。
「どの国にとっても、その文化と伝統を失えば、魂も失うことになります。私たちが先祖から受け継いできた優れた価値を生かしていくためには、国の精神と伝統的な文化を尊ぶ必要があります。もちろん、このような価値を継承するためには、絶え間なく新しい活力を吹きこんでいかねばなりません。伝統は生き物です。だから、つねに新しい世代に合わせて、適応させていかねばなりません」
この挨拶のなかで、「伝統」という言葉を「王室」に置きかえてみれば、イギリスで王室が果たしている役割がわかろう。私(加藤氏)はチャールズ皇太子がそのように意識して話したのだろうかと思った。
イギリス人が古いものを好んでいるのも、王室を大切にしている心情に通じている。イギリス人は家具であれ、カーペット、食器、台所用品、庭具であれ、古いものを大事にしている。新しいピカピカしたようなものを好まない。新奇なものよりも、古い、使い慣れているもののほうが、安心できるのだ。
衣服も古いものを大切に着ている。流行の派手なものは好まれない。だからブランド物のデザイナーズシャツのようなものは、趣味がよくないとみなされる。狩りのために新調したシューティング・ジャケットは、古くなったら庭仕事のためのガーデニング・ジャケットに格下げする。
ニュー・マネー(成金)よりも、オールド・マネー(世襲の財産)をもっている者のほうが尊重される。イギリス人は古い建物や、家に愛着を持っている。建物は外観だけではなく、そこで先人たちが仕事や生活を営んでいたことに親しみを感じるのだ。
参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長