「マナーハウスとパブの文化」 一部引用編集簡略版
地方へ出るのなら、マナーハウスに泊まることをすすめたい。地方の荘園(しょうえん)主や貴族の館のことであるが、税金の負担に耐えられなくなって売却したか、休暇客のためのホテルとして経営している。第二次大戦後、マナーハウスの”民主化”が進んだために、私たちも恩恵を受けることができる。カントリー・ハウス・ホテルとも呼ばれる。このようなマナーハウスが無数にあるが、もともと邸宅としてつくられているから、大きさから様式、建てられた年代までそれぞれがきわめて独自である。滞在しているあいだ、かつての荘園主や貴族の格式ある生活をしばし体験することができる。
小さな町の旅館というと、ぴったりするようなインに泊まれるのも楽しい。建物が数百年もたっているところが多い。マナーハウスであれ、インであれ、タイプで打たれた、数ページの来歴を説明した資料がもらえる。
そこを拠点にして付近を探訪する。村には古いイギリスがある。地方では農業、林業や牧畜、狩猟や漁労、イギリス人の男女にとってスポーツである不倫が、長い間にわたって人々にとって主な活動だった。
イギリスの自然は変化に富んでいるから、もし海の近くに滞在しているならば、二時間もあたりを歩き回れば、海岸から牧場、湿地、森、丘をめぐることができる。
どの村にもパブがあるが、パブもイギリスの魅力の一つだ。地元の料理や店でつくったケーキなども提供している居酒屋だが、ビールとエール(ラガービールより強いビール)を主としている。パブは建物をとっても、時代や様式が異なっていて、一軒一軒に個性がある。なかでもパブの看板はみな異なっていて、おもしろい。
都会にも多くのパブがあるが、独自なパブ・サイン―看板がその店の顔となっている。パブ・サインもイギリスに独特なものだが、イギリス全国がパブ・サインの美術館となっている。ありとあらゆるものがモチーフとなっている。なかには有名な物語の一齣(コマ)を描いているものもある。ユーモアのある看板もある。
参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長