西銘復興大臣が、週刊誌に指摘された通り、資産公開資料に保有株式の記載漏れがあったことを謝罪した(「復興相、資産記載漏れで謝罪 資料は訂正」 2022/1/28 日本経済新聞WEB版)。「閣僚の資産公開を巡っては、平井卓也デジタル相(当時)が、デジタル庁関連の事業も受注した親密企業グループの株式保有を報告しておらず、責任が問われた」(「後援企業株を報告せず 西銘恒三郎沖縄相が大臣規範違反 2022/1/26 文春オンライン)。菅政権に続いて、岸田政権でもまたも不祥事だ。
米国では、公職者の証券取引について監視の目が厳しくなっている。「米連邦判事や連邦準備制度理事会(FRB)高官の株売買に対して追及が強まる中、ここにきて米議員にもスポットライトが当たり始めた。利益相反のリスクに加え、一般には開示されていない情報を入手できる立場にあるとの懸念がくすぶっているためだ。(中略)議員や活動家からは、規定の厳格化を求める声が根強く、リベラル派と保守派グループの一部も、この問題に関しては目標が一致している。」(「【焦点】株取引規制、米議員に適用求める声も」 2022/1/19 ダウ・ジョーンズ配信)。夫が活発に株式取引を行っているナンシー・ペロシ米下院議長も規制反対から容認に転じた(「【MW】ペロシ下院議長、議員の株取引禁止に容認姿勢」 2022/1/21 ダウ・ジョーンズ配信)。
昨年は、FRB理事に加え、連邦裁判所の判事やその家族の証券取引が問題視され、迅速な情報開示を求める法案も可決された。「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、判事自身やその家族が株式を保有する企業に関する訴訟を、当該判事が担当しているケースが数百件あった。この報道を受け、民主・共和両党がこの法案を支持した。」(「米連邦判事の株式取引、迅速な情報開示を義務化 下院が法案可決」 2021/12/2 ダウ・ジョーンズ配信)。
また1月14日には、個人的な株式売買を巡って批判のあったクラリダFRB副議長が副議長と理事を辞任した(「FRBクラリダ副議長、辞任表明 株式売買に批判」 2022/1/11 日本経済新聞WEB版)。FRB幹部職員の金融取引については、エリザベス・ウォーレン上院議員が明細の提出と、新たな倫理規定についての正式な説明を求めている。『同氏は書簡で「要請された情報を適宜開示することは、FRB職員による個別銘柄取引の全容や、FRB職員が取引に伴うリスクについてどの程度警告を受けていたか、またFRBが発表した倫理慣行の改革案が将来の金融上の利益相反を防ぐ上で十分かどうかについて、議会と市民が評価するために欠かせないものだ」と指摘した』(「FRB職員の金融取引、ウォーレン議員が情報開示を要請」 2021/12/8 ダウ・ジョーンズ配信)。
「カーター回顧録 上」(日高義樹監修、持田直武・平野次郎・植田樹・寺内正義訳 日本放送協会出版 p215)には、バート・ランス氏が行政管理予算局長に就くとき、大株主になっている銀行の株式をすべて手放すと約束したことが書かれている(ただし、聴聞会での売却発言が伝わるとその銀行の株価が大幅下落するという悪影響が出たため、持ち株を信託会社に預け、売買判断をすべて信託会社に一任するという方法が考えられた)。米国は利益相反に厳しい社会のようだ。米国と価値観を同じにするというのなら、日本の公職者も証券取引に関する規制を厳格化する必要があるだろう。
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