投資家の目線

投資家の目線220(日本航空株の相場操縦疑惑)

 2006年8月の日本航空が大型増資した時の株価下落に関して、相場操縦疑惑が持ち上がった。内容は2009年8月27日の産経新聞電子版が詳しい。
 問題となるのは高い指値で大量に買い注文を出した後それをキャンセルする「見せ玉」、空売りを明示していなかったこと、株券の受渡不履行(フェイル)が繰り返されたことだろう。 
 まず「見せ玉」(報道内容だけでは誤発注だった可能性も完全には否定できないが)についてだが、「見せ玉」は問題があるが高い指値の買い注文なので株価の下落誘導とは矛盾する
 次に空売りの明示の問題だが、空売りを明示しなかったことで、株価下落局面で直近値以下での空売りを規制するアップティック・ルールにかからなかった可能性がある。但し、アップティック・ルールは流動性低下の懸念や相場操縦への抑制効果が疑問視されたため、米国では2007年7月に廃止された代物だ(今年3月ごろアップティック・ルールの復活が議論されていたがその後どうなったのだろう)。なお、金融商品取引法施行令で証券会社側も空売り注文かどうか確認しなければならないはずだが、きちんと確認したかどうかも問題だ。
 最後の受渡不履行だが、日本ではフェイルに対してうるさく言われるが、海外でどうかはよく分からない。株の買い手が売り手に対して貸株しているようなものだから、品貸料ぐらいの金額を売り手が買い手に支払えば、それほど問題視されないのかもしれない。

 2006年7月24日の「日本航空増資の一考察」
 http://blue.ap.teacup.com/applet/finance/20060724/archive
でも示したとおり、日本航空株下落はロバート・マートン(マイロン・ショールズとともに1997年にノーベル経済学賞受賞)が提唱したマートン・モデル(オプション評価理論を用いた社債評価モデル、Moody’s KMVがこのアプローチを用いて企業の梼Y確率を予測するサービスを行っているという)で理論的にほぼ説明できると考えている。いずれにしても日本航空の株価が下落したのは市場の同社に対する信用が回復しなかったためだろう。この時期にこんなことが出てくるのは、日本航空支援のための口実が欲しいのだろうか?
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・大韓民国が宇宙ロケットを打ち上げたが、衛星軌道への投入は失敗した。以前、朝鮮日報が同ロケットは那覇上空を通過すると報道していたので、地上の被害がなくて何よりだ。
・総選挙は下馬評通り民主党が圧勝した。同党の基本となる主張は日本のシステム変更だから、早期に結果が出るわけではないだろう。国民の側も今までのように官僚頼みにしない覚悟がいる。
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