投資家の目線

投資家の目線36(ライブドア事件の起訴状を読む 上)

 2月16日にライブドアマーケティング(以下LDM)から開示された起訴状の記載内容を読んだ。
 ポイントとなるのは、
1.LDM社株式を多く発行してライブドア(以下LD)社が多目の売却益を得るために、マネーライフ社との株式交換比率を過大に設定したにもかかわらず、第三者機関が算出した結果を踏まえ、両者間で協議の上で決定したと交換比率の妥当性をうたった至J示したことが虚偽の開示である
2.平成16年第3四半期の売上、経常利益、当期純利益計上が架空のものであり、その開示が虚偽の開示である
の2点であろうと考える。1点目が有価証券の取引に絡む偽計取引で、2点目が株価を変動させるための風説の流布にあたるというのだろう。カネボウのような粉飾決算事件では有価証券報告書の虚偽記載で罪が問われていたが、今回のような四半期データは関係しないので、風説の流布で起訴したのだと考える。
 なお、マネーライフ社買収のニュースがLDMやLDの株価に影響を与えたとは考えにくい。買収発表日(04年10月25日)前後の株価の推移をみると、
 04/10/22 04/10/25 04/10/26 04/10/27 04/10/28 04/10/29 04/11/29 04/12/30
TOPIX 1,090.84 1,075.12 1,073.20 1,074.29 1,090.25 1,085.43 1,103.60 1,149.63
JASDAQ 1,711.93 1,704.31 1,696.06 1,694.34 1,699.63 1,694.00 1,688.06 1,737.39
LD 340 360 353 339 346 354 402 387
LDM 178,000 179,000 160,000 162,000 167,000 170,000 64,500 314,500
注)LDMは04年11月8日に株式の百分割を発表している。
東証マザーズ指数が取れなかったので、日経ジャスダック平均(表中ではJASDAQと表記)を新興市場のインデックスに代用している。

であり、それほど株価が上昇しているとは思えない。何しろ04年10月といえば、ダイエーの再生機構入り発表や西武鉄道の有価証券報告書記載事項の訂正問題(名義株の一件)、マザーズ上場のアソシエントの粉飾決算などの経済事件のほかに、台風23号や中越地震などの大きな自然災害が発生し、マネーライフ社の買収など日本経済新聞のニュースにも出ていなかった。上場企業が株式交換で未公開企業を買収した例は、同年2月5日に発表された東京スタイルによるジャック社等買収があるが、株価にほとんど影響は見られなかった。当時東京スタイルの大株主であった、いわゆる村上ファンドが現金での買収を求めたのは記憶に新しい。その後東京スタイルは株式交換による買収を行う一方、自社株を公開買い付けすることで決着がついた。LDMの時価総額が大幅に上昇した主因は株式百分割によるものである。
 株式交換比率は第三者機関が算出した結果を参考にするとはいえ、買収当事者間で決めるものであろう。第三者機関が公正な評価をしたのか、また第三者機関の評価が妥当ならば、どの程度までなら第三者機関の評価との乖離が許されるのかが焦点になると思われる。しかし、判断はなかなか難しいのではないだろうか。株式交換のために発行された新株は1,600株、10月25日の株価で換算すると3億円分にも満たないのである。企業価値の評価は難しい。ソフトバンクは、年10億円程度の赤字を出していたホークス球団の株式約98%を50億円も出して取得したのだから。

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