投資家の目線

投資家の目線324(「異常な契約」を読む)

 「異常な契約 TPPの仮面を剥ぐ」(ジェーン・ケルシー編著 環太平洋経済問題研究会 農林中金総合研究所 共訳)を読んだ。過去のNAFTA、対米国FTAの交渉過程などを丹念に追っており、それを元にすればTPP交渉がどの方向に向かうのかも予想できるだろう。また、この本の検討内容は安全保障(人身売買や諜報活動などを含む)など政治の分野にも及ぶ。かつ、米国民の大半、民主党支持層に限らず茶会党なども含めて自由貿易には懐疑的で、NAFTAに反対の人も多いことも明らかにする。

 TPPは医薬品などの知的財産権を含め24分野にも及ぶのに、日本の報道は農業の関税問題に偏っているのが怪しげだ(政治的意図があるのか?)。農業では遺伝子組み換え食品の問題もある。政府調達問題もあるし、医薬品の知的財産権問題ではジェネリック薬品の使用も検討課題となりそうだ。また、第7章「TPP・アグリビジネス・農村生活」の「チリからの視点」では、自由貿易を進める過程でのチリにおける地域コミュニティーへの影響も報告されている。

 いずれにしても、マスコミ報道だけではTPPのことは分からない。TPPを考えるのに、この本は読んだほうが良いと思う。

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・タレントの島田紳助氏が芸能界を引退するという。原因は暴力団関係者との交際のためだ。以前書いたように、アメリカも「ヤクザ」には厳しくなっている(追記:上記の人身売買に関わる日本の組織として考えられるのは「ヤクザ」だろう)。
 この件については、エコノミストの植草一秀氏もブログ(「力不足確認済み前原誠司氏と島田紳助引退の波紋」)に書いている。


・浜松市内で中小企業向けに事業継続計画(BCP)セミナーが開催されるという。セミナーでは、「高橋海事ISO労務事務所(静岡市)が津波や原子力発電所の事故を踏まえたBCP策定について解説」するという(2011/8/25日本経済新聞 地方経済面 静岡版)。静岡県の企業経営者は、原発事故に対する意識が高いようだ。川勝静岡県知事が菅首相の「脱原発依存」の姿勢を評価するのも良く分かる。


・北海道電力泊原発のシンポジウムで、またヤラセが見つかった。以前、北海道電力は否定していたが、やっぱりあった。玄海原発の件に続き一般紙より早く「しんぶん赤旗」がスクープする状態が続くならば、エネルギー分野への投資家にとっても「しんぶん赤旗」は要チェックだ。

“やらせ” 道民冒とく  党道委が会見 北電・道は徹底調査を  2011/8/27 しんぶん赤旗


・金国防委員長の露中訪問など朝鮮半島情勢に変化が見られる。与党ハンナラ党の元代表、朴氏の対北政策は、融和でも圧力でもない第三の道をとるようだ(2011/8/24 朝鮮日報)。昨年の哨戒艦「天安」事件では、「天安艦沈没当時、救助に出た海上警察が最初の状況について "座礁と連絡を受けた"」という(海上警察、天安艦 最初状況 ″座礁と報告を受けた″ 2011/8/24日 ハンギョレ新聞)。この報道も、朝鮮半島情勢に何らかの影響を与えるかもしれない。



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