投資家の目線

投資家の目線748(原発問題、「桜を見る会」問題と裏社会)

 齊藤真著『関西電力「反原発町長」暗殺指令』(宝島社)は、関西電力の若狭支社副支社長がプルサーマル発電に反対していた福井県高浜町の町長を、原発警備犬を使って殺せという指示を出したという事件(実行を指示された実名告発者の裁判でも、「それは私の失言だと思います」(p237)と、町長襲撃発言自体をしたことは当の副支社長も認めている)について書かれた本である。暗殺とは、阪和銀行副頭取射殺事件、住友銀行名古屋支店長射殺事件(イトマン事件絡みと推測される)、餃子の王将社長射殺事件があった「関西らしい」と言えよう。

 さらに高浜町といえば、今年森山栄治元助役(故人)が関西電力の幹部に金品を渡していたことで大きくクローズアップされた。原発の取水口に詰まるクラゲを利用した補助金を引き出す仕組み(同書p121~p124)とか、地方にとって原発関連の仕事は大きなカネを得られる利権になっている(地元の仕切り役として“エムさん”という人物も登場する)。

 プルサーマル反対に関しては、収賄額ゼロ円で有罪判決を受けた佐藤栄佐久元福島県知事と共通する面がある。プルサーマル発電は、日本の多すぎる保有量が問題視されているプルトニウムと、ウランを混ぜたMOX燃料を使う発電方法で、プルトニウム削減には確かに役に立つだろうが、中国電力のホームページ(原子燃料サイクルとプルトニウム利用(プルサーマル))によればMOX燃料に含まれるプルトニウムの割合は4~9%と少量に過ぎず、どれだけプルトニウム削減につながるかはわからない。

 同書(p65~p66)には、『個別の“特命”を受けたアウトローが、若狭(原発銀座)界隈に出入りしている。広域暴力団の直参団体から、同和団体関係者、解体業を営む企業舎弟などが、その代表的なところである』と書かれている。これは、グリコ・森永事件を扱った「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」(一橋文哉著 新潮社)に出てくる、有力企業舎弟の「ワシの仲間には東大出のエリートもいれば、大物政治家の秘書だった奴から元全共闘の活動家までいろいろとおる。カネ儲けの前には、左翼も右翼も関係ないわ」(p121)という発言と共通するものがある。例として、『関西電力「反原発町長」暗殺指令』には、馬毛島を舞台とした平和相銀不正融資事件に関連して政界工作した大物右翼と、関西電力の副社長は刎頚の友とも呼ばれていたことも書かれている(p114~p115)。

 裏社会といえば、総理主宰の「桜を見る会」に反社会勢力の人物が招待されていたことが明らかになった。田中森一著「反転」(幻冬舎)には、安倍晋太郎事務所が山口組系暴力団の組長の訪仏を手助けしたことが書かれている(p211~p216)。安倍晋三首相の下関の自宅に火炎瓶を投げ入れた犯人は工藤会の関係者で、工藤会は2014年7月4日(アメリカ合衆国の独立記念日)に安倍内閣が対北朝鮮独自制裁の一部解除を打ち出す直前の7月2日に、米国財務省に金融制裁の対象とされた。山口組や工藤会など日本の主な暴力団は、アルカイダ同様米国の金融制裁の対象となっており、米国では国際テロ組織並みに扱われている(ロバート・ホワイティング著 松井みどり訳「東京アンダーワールド」(角川文庫)には、バブル期、稲川会の看板企業の不動産会社の代表団がブッシュ大統領の兄プレスコット・ブッシュ氏に接触をはかったことが書かれている(p289))。駐日アメリカ大使を招待した「桜を見る会」に、国際テロ組織関係者に準ずるような人物も招待されるなどということは安全保障上大いに問題があるではないのか(海外からテロリストに関する情報が入らなくなるのではないのか?上がこれではテロリストに関する情報もダダ洩れになるだろうに)?安倍首相は日米同盟の強化などというが、どの口がそう言うのか。


追記:国際テロ組織アルカイダ等と同様に米国財務省の金融制裁対象になっている山健組の元構成員を、駐日アメリカ大使と一緒に「桜を見る会」に招待している。例えば、アルカイダを脱退した元戦士と駐日アメリカ大使を同じパーティーに招待したら大問題になるだろうに…。
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